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私の海外サバイバル

新しい技術で、新しい市場をひらく@ジャカルタ(インドネシア)

[第140回]宋知勲

Shinta VR 創業者

【ON】

ジャカルタオフィスの様子(写真はすべて宋さん提供)

ジャカルタと東京に拠点を置く会社を立ち上げて約2年になります。


1年の大半はジャカルタで過ごしていて、インドネシア人の同僚と一緒に360度の立体映像が見られる仮想現実(Virtural Reality=VR)の技術を使った映像やゲームの制作を手がけています。


たとえば企業向けでは、不動産会社向けに実際に物件の内覧を体験できる映像をつくったり、旅行代理店向けに旅行先の風景を味わえる映像をつくったりしています。このほかにも家電メーカーなど、30社以上のプロモーション映像を手がけてきました。


インドネシアでは、商品の宣伝やブランドづくりのために、ユーザーを集めるイベントがよく開かれます。そこで、プロモーションとしてVR映像を見てもらうのです。イベントのお客さんには人気ですし、企業からの問い合わせも増えています。また、リアル店舗でのVR活用やVRを使ったアーケードゲーム(業務用ゲーム機)も出てきました。これからもさらに多くの企業と仕事をしていけると思います。


また、世界の市場を視野に入れて、VRオンラインゲームの開発を進めています。このゲームでインドネシアで新しいエンターテインメントを生み出したいと思っています。若い人たちには、新しい技術への適応が早く、新技術を当たり前のように使いこなす人も多い。VRを使ったeスポーツといった新しいジャンルをつくり、若者の間に新しいムーブメントをつくっていくねらいです。

VRを使ったイベントの様子。

もともと、大学の理工学部を卒業した後、大手システム会社に入ってシステムエンジニアをしていました。


VR技術に出会ったのは、2014年の夏。友人がOculus Rift DK2というVR機器を持っていて、それを使ってジェットコースターの映像などを見せてもらいました。映像を見て驚きました。本当にジェットコースターに乗っていると思えるほど。すごい技術が出てきたと思いました。


そこから、会社が休みの日に、VR映像を見てもらう体験会のようなイベントを手がけるようになりました。するとイベントは大盛り上がりで、見た人がみんな感動するんです。その熱狂を見ているうちに「これは新しいビジネスになる」と考えるようになりました。


実は、当初は日本での起業を考えていました。ところが大学時代のサークルで知り合ったインドネシア人の友人にその話をすると、「ぜひインドネシアでもやろう」と誘われたのです。


もともと、海外での事業に挑戦してみたい気持ちはありました。特に新興国は、これから市場が立ち上がってくるところ。可能性を感じていました。しかし、インドネシアはそれまで訪れたこともなかった国です。


15年の6月に、初めてインドネシアを訪れました。正直なところ、いろんなことが「まだまだ」だと感じました。 たとえば自動ドアないとか、地下鉄がないとか、渋滞がひどいとか。ホームページがない企業もあったりします。


しかし、課題が多いというのは、ビジネスチャンスが多いということでもあります。


さらに、訪れた際にFBを通じて、COO(最高執行責任者)のアンデス・リツキに出会えました。アンデスは、2013年から様々なクライアントとVRのプロジェクト持っていて、彼のチームが作ったコンテンツも、日本と遜色のない高いレベルでした。彼に会わなければ、ジャカルタでの起業には踏み切らなかったかもしれません。そして、そのアンデスが、ドイツでVRを専攻していたCTO(最高技術責任者)のアンドリュー・スティーブン・プイカを引き入れてくれました。

ジャカルタオフィスの様子

とはいえ、最初はかなり大変でした。会社を立ち上げたのは2016年の初めですが、インドネシアでVRを手がけていた会社はありませんでした。VRとはどういうものなのか、メディアも含めて知っているひとがほとんどおらず、売上を立てるのに苦労しました。いろんな人脈をたぐっては説明に行き、イベントに出てはデモ映像を見てもらい、少しずつ理解してくれる人を増やしていきました。


こちらでビジネスを進めるうえでは、人間関係は非常に重要です。


たとえばVRのエンジニアの確保にしても、就職や転職サイトに求人を出したら優秀なエンジニアが来てくれる、ということはまずありません。イベントなどを通じて交流の和を広げ、大学などにも人脈を広げて優秀なエンジニアを集めています。VR業界は、まだまだ狭い業界です。私たちは、この分野のリーディングカンパニーでもありますし、すでに優秀なエンジニアがいてくれるおかげで、少しずつ優秀な人が集まってきてくれています。


インドネシア政府とのつながりもできてきました。政府には、自国の産業を育てようという考えが強くあり、創造経済庁(Bekraf)が、クリエイティブ産業の育成をめざしています。その中で、VRは対象になっており、様々な機会をいただいています。

VRの体験イベント

そういう意味でありがたかったのは、私たちがまったく新しい分野に挑戦している企業だということです。

おかげで、人脈を一から築いていくことができました。既存のプレーヤーがたくさんいる分野に参入するには、すでにできあがっている複雑な人間関係の中で、自分たちの立ち位置を築いていく必要があります。それは、大変だったと思います。


人脈を広げるうえでは、親日家が多い、というのもありがたいことです。

「日本から来てVRの会社をやっている」と言うと、普通なら簡単には会えない人に会えることがあります。

たとえば、こちらで非常に有名なユーチュ―バーも「おもしろい」と言って会ってくれましたし、大企業の会長さんにいきなり会えたこともあります。


ベースには、日本の技術への信頼感があります。自動車などは、日本メーカーの車も人気です。そうした日本の技術への信頼と、VRという新しい分野への興味が組み合わさっているので、面白いと思ってもらえているようです。


Akira Sou

そう・あきら/1987年、東京都出身。2016年に東京とジャカルタに拠点を置くShinta VRを創業し、最高経営責任者に。

(次ページへ続く)

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