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私の海外サバイバル

成長めざす活力が、魅力@ムンバイ(インド)

[第137回]勝又暢宏

ワコール・インディア チーフマーケティングオフィサー

ON

活力にあふれるムンバイの街=写真はすべて勝又さん提供

昨年4月にインド市場の担当になり、9月に現地企業との合弁会社に赴任しました。新しい高級女性下着の市場をつくることをめざし、インド人の同僚たちとともに店舗展開を進めています。


辞令は「晴天の霹靂」でした。過去には香港とパリへの駐在経験がありますが、インドには興味もなく、訪れたこともありませんでした。インドの合弁会社は2015年の設立で、よく知る先輩が担当していましたが「大変ですね。頑張ってくださいね」と言うぐらいで、完全にひとごとだと思っていました。


それが、まずは月に2週間はインドに出張する生活になりました。初めて訪れた時は、2日目で「もう無理」と思いました。どこも人があふれていて、犬が歩き回っていて。なにより暑いし、道はほこりっぽいし、うるさいし、においもきつくて全部がモワーッと迫ってくる感じです。見たことがない世界でした。


それが、少しでもやれるかなという思いになったのには、いくつか理由があります。

ムンバイの高級ショッピングセンターにあるワコールの旗艦店


ひとつは、人です。赴任するまでの半年間は、出張のたびに同じホテルに滞在していましたが、スタッフがとてもフレンドリーだったんです。これは欧州や香港ではなかった経験でした。もちろん10億を超える人口を抱える国ですので、いろんな人はいます。ただ、現地の同僚も優しくて、いいメンバーがそろっていました。そこで、こういう人たちとならやれるんじゃないか、と思うようになっていきました。


もう一つは、仕事の魅力です。インドには高級下着の市場は、ほぼありません。そんな土地で、ワコールの下着をつけた経験がない人たちに、つけてもらう。その経験をしたら、もう戻れなくなった、というようなファンを増やしていく。そうやってまったく新しい市場をつくっていくのは、とてもやりがいのある仕事です。


長年、国内ブランドが強かったインドですが、ここ数年、急激に海外ブランドへの関心が高まっています。経済成長で富裕層や中間層が増え、いろんなものを買おうという人たちも増えている。非常に大きな可能性を感じています。

ショッピングセンター内には、ブランドショップも並ぶ

店舗網も広げています。昨年11月までムンバイを中心に3都市の4店でしたが、この3月末までに6都市10店にまで増やし、さらに拡げていくつもりです。インドでは、様子見のビジネスでは勝負にならない。積極的に投資していきたいと考えています。


こちらで大事なのは、広い視野を持って「私たちにしかできないこと」を考えることだと思います。インドの人たちは自分たちの文化に誇りを持っていますし、現地のパートナー企業は、これまでのやり方にも自信を持っています。確かに、いろんなことが独特ですし、こちらから新しいことを提案しても、「そんなやり方では通用しない」と言われることもよくあります。


しかし、これまでのインドでのやり方とまったく同じやり方に染まってしまっては、私たちがやる意味がありませんし、成功しないでしょう。ですから、インド市場のことを深く学んでいくと同時に、3カ月に1回ぐらいはインドを離れて、自分たちの立ち位置を考え直すようにしています。

ムンバイのショッピングセンターのフードコート

もうひとつ、自分の中の「軸」も意識しています。ワコールには「世の女性に美しくなって貰う事によって広く社会に寄与する」という経営理念がありますので、ここを譲らない、ということです。


というのも、こちらでビジネスをしていると、昨日の決定がきょうひっくり返る、ということは珍しくありません。「あのときはこう決めたじゃないか」とこだわっていては、話が前に進みません。


これには別に悪気があるわけではなくて、「昨日より今日は進んでいるのだから判断も変わる」ということですから、そこだけを見れば、それほど悪いことだとも思えません。


しかし、自分の軸がないと、決定があっちへ行ったり、こっちへ行ったりして、なんのためにやっているのだか分からなくなってしまいます。そこで、ここだけは譲らないという部分はしっかり意識して、あとは柔軟に対応していくようにしています。


Nobuhiro Katsumata

1971年、埼玉県出身。94年、ワコールに入社。2017年4月にインド担当となり、同9月に赴任。

(次ページへ続く)

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