1. HOME
  2. People
  3. 映画きっかけ 「現場みたい」と協力隊に@キガリ(ルワンダ)

映画きっかけ 「現場みたい」と協力隊に@キガリ(ルワンダ)

私の海外サバイバル 更新日: 公開日:
ルワミッツ社の従業員たちと農場で

古岡繭 RWAMITTU(ルワミッツ)社勤務

ON

青年海外協力隊でルワンダに派遣され、首都キガリから高速バスで2時間半のところにあるンゴマ郡の郡庁で若者の雇用促進やビジネス支援の仕事をしました。昨夏に2年の任期を終えて帰国した後、すぐに戻り、協力隊の先輩が2年前に北東部のニャガタレ郡で立ち上げた、蜂蜜やジャムを製造・販売する会社で働いています。従業員11人の会社です。地域に根づいた企業をめざしていますが、輸出品の開発も進めています。

私の主な担当は販促企画や広報。オフィスのあるキガリで勤務することが多く、政府の役人や弁護士と協議することもあります。

ルワミッツ社の農場にあるハチの巣箱

英語とフランス語も公用語ですが、老若男女に通じるのはやはり、現地語のキニアルワンダ語。2014年夏にこちらにきて1カ月ほどレッスンを受け、今では仕事でもある程度は使えるようになりました。

ルワンダでは、一つの用事を片づけるには思わぬ時間がかかります。協力隊時代は、雨が降ると集会や仕事に来ない人もいて、悩まされました。バスは席が埋まらないと出発しないこともあり、時間が読めません。訪問先で待ちぼうけを食らうことも多く、時間のコントロールがとても難しいです。

政府の役人は多忙で、アポイントがなかなか取れません。上司や上位機関が言ったことは絶対で、事前確認をしておいても急遽キャンセルになることもあります。現地語を使って距離を縮めたり、電話ではなく直接会ったりしてコミュニケーションを取るように心がけています。

高校時代から世界史が好きで、アフリカに興味を持ちました。80万人から100万人が犠牲となったとされる1994年のルワンダ大虐殺を題材にした映画「ルワンダの涙」を見て、アフリカに関わることをしたいと思い、大学院ではルワンダに接しているウガンダの元子ども兵の経済的自立を研究しました。友人や双子の妹が海外に飛び立って行くのに触発され、より現場を見てみたいと思って協力隊に応募し、派遣されたのがルワンダでした。

昔は大好きなパン屋でパートをしながら子育て・家事という暮らしに憧れていました。今はルワンダにどっぷり漬かり、この国のことが好きになり、海外に関わる仕事を続けていきたいという思いが強くなりました。

OFF

首都キガリの風景

ルワンダは高地にあり、1年を通じて18~26度。日本より過ごしやすく、エアコンは不要です。年中同じ服で大丈夫です。

アフリカはネガティブなイメージでひとくくりに捉えられていると感じます。西アフリカでエボラ出血熱が発生したときも「ルワンダは大丈夫か」とよく言われました。大虐殺から20年以上がたち、今のルワンダは比較的平和です。私が大切にしていることは、現地の人々の考え方や生活を知ることです。仕事で良い案を得るためにも、生活を充実させるためにも、現地の人々との交流はとても大事です。

ルワンダの人々に溶け込む秘訣は、自宅に招待したり、招待されたりすること。仕事の相手に限らず、道端でたまたま出会って仲良くなった人を後日招くこともあります。声をかけると10人以上でやってきて驚いたこともありました。

古岡さんの自宅に友人を招いて食事会。この日のメインは牛肉の煮込みとカボチャの天ぷら

おもてなしの中心は、なんといっても料理です。

こちらの料理は、米、牛肉の煮込み、サラダ、フライドポテト、フルーツなどですが、ルワンダの人は食に対してとても保守的です。口では「おいしい」と言ってくれても、おかわりしてくれない。砂糖を使った日本料理は評判があまり良くなく、手すら付けてくれないこともあります。おもてなしの料理メニューを考えるのは毎回大変。人気があったのは、天ぷら。ひき肉とジャガイモのコロッケも喜んでもらえました。

招待されて大変なのは、どんどん食事を出されること。少しでも残すと、悲しそうな顔をされます。2軒連続で訪問する予定があるときは、2食をたいらげなくてはなりません。

古岡さん行きつけのマーケット。週末には多くの人でにぎわう

休日は近くのマーケットに買い出しに行きます。顔見知りになると、「友達だから」「また買ってね」の両方の思いを込めて、オマケしてくれることもあります。ルワンダでの生活も、初めは慣れずに大変でしたが、「住めば都」でもうすっかり慣れました。

水は貴重です。よく断水するので、水がめにためます。洗濯物は手で洗う。米は鍋で炊く。水が少なくてもお風呂には入れる。電気がなくてもローソクがある。皮むき器もまな板も使わずに野菜を切ることもできる。

日本はとても便利だけど、無駄も多かったなあと思います。雨が降ると「今日は野菜が育つから良かったな」と思うようになりました。

ルワンダでは1人で住んでいても寂しい思いをすることはありません。近所の人とばったり会ったら近況を話し合う。村の集まりに出て、触れ合う。バスで隣の人とおしゃべりをする。
人として根本的な暮らしがある。それがルワンダで暮らす魅力です。

(構成 GLOBE記者 鮫島浩)

キガリ

標高1500メートル前後の高地に位置し、人口約74万。フツ族とツチ族の抗争を乗り越え、今ではアフリカの首都の中で汚職の少なさ、治安の良さで知られる。ルワンダの女性国会議員の割合は2014年10月現在で57.5%。世界一だ。

Mayu Furuoka

ふるおか・まゆ/1989年、兵庫県姫路市生まれ。大学院修了後、青年海外協力隊でルワンダへ。現在は蜂蜜やジャムを製造・販売するRWAMITTU(ルワミッツ)社で働く。