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良質なコーヒー豆づくり ゼロから支援 @ディリ(東ティモール)

私の海外サバイバル 更新日: 公開日:
天日干ししながら、コーヒー豆をより分ける地元農家の人々  photo:Ito Junko

私のON

地元のコーヒー生産者を支援し、良質なコーヒー豆をフェアトレードで日本に送る活動を2002年から続けています。東ティモールで輸出作物の9割以上を占めるコーヒーの生産を支えることで、人々の経済的自立につなげたいと思っています。

首都ディリの南75キロにあるマウベシ郡という地域で協同組合をつくり、約500世帯のコーヒー農家が参加しています。最初は原始的な加工法しかなく、私たちが機材を提供し、技術指導を重ねました。熟した実をより分け、洗浄や乾燥を丁寧にすることなどで品質を向上させ、年100トンを出荷できるようになりました。

長く他国の支配下にあり、自分で責任を持って決定しやりとげるという経験が乏しかったため、協同組合の運営は大変です。組合を自立させる役割を担う私の存在が、組合員の依存心を生んでしまっている面もあり、悩ましいです。組合資産の分配をめぐるいざこざもありました。

それでも、ゼロから何かを始めるだいご味はたまらない。生産者たちが「東ティモール」と産地名の入った麻袋を目にしたときや、日本の消費者からの「おいしい」という評価を耳にしたときの、彼らの誇らしげな顔は忘れられません。

私のOFF

東ティモール人の夫、子供3人、そして親戚4人と同居しています。苦労は子どもの教育で、学校は教室も教員も足りず、公用語のポルトガル語による教育もしっかりできていません。医療設備も貧弱で、脳腫瘍(しゅよう)が疑われる人が検査や手術を受けられず、鎮痛剤とビタミン剤を処方される状況です。家族がもし重い病気にかかったらと思うと、不安になります。

一方で、手つかずの自然はとても美しい。夕暮れの浜辺に家族連れが集う光景は、平和そのものです。

(構成 GLOBE記者 江渕崇)

いとう・じゅんこ

1974年、東京都日の出町生まれ。上智大学在学中に、インドネシア研究の故・村井吉敬教授に師事し、インドネシア農村社会に暮らす人々に関心を持つ。2001年に大学院を修了。