RSS

Breakthrough 突破する力 伝統と冒険 平尾成志が育む「BONSAI」というアート



「陸上一筋」の学生の一目ぼれ

新宿で。パフォーマンスを始める前、必ず亡き師匠の金ばさみに祈る。実はあがり性という平尾が「ゾーン」に入る儀式だ


徳島県三好市の緑豊かな山あいで育った。中学で始めた長距離走で才能を伸ばし、京都産業大に推薦入学する。でも、心の中では「燃え尽きた」と感じていた。厳しい陸上部の練習や寮の上下関係に悩み、やめることばかりを考えていたが、応援してくれる祖母を思うと踏み切れなかった。


ある日、京都に遊びに来た家族とともに東福寺の本坊庭園を訪れた。美しいコケと切り石による市松模様で知られる、昭和の作庭家・重森三玲の代表作。一目見ただけで、重苦しい気持ちが吹き飛んだ。「日本の文化を継承していくって、かっこいい」。父の勝に「庭師になりたい」と告げたのは大学4年の時。だが、勝の知人を通じて会った造園業者に「やめておけ」と言われる。途方に暮れたまま、盆栽の展示を見に行った。


作品を下からのぞき込んだ瞬間、驚いた。「こんな薄っぺらい鉢の中に林があるなんて、どういうことや!」。山の中を自転車で走り回り、秘密基地を作った「悪ガキ」時代の記憶がよみがえる。「ああ、面白いなあ」。その日のうちに、将来を決めていた。


盆栽園の家に生まれたのでも、盆栽に親しんでいたのでもない。そんな若者が、なぜ飛び込めたのか。母の優子(64)は、修業時代の息子の言葉を覚えている。「1秒を競う陸上の世界と違って、時間がゆったりと流れる仕事は、めっちゃええ」




(次ページへ続く)

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加

Popular article | 人気記事

さらに記事を見る
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示