RSS

Breakthrough 突破する力 沖縄科学技術大学院大学(OIST)教授 銅谷賢治が挑む「脳科学」と「人工知能」の融合


生物学の実践と、計算によるモデル化。その両方にふれた銅谷は、帰国後、この二つの分野に足場をおく。まず国際電気通信基礎技術研究所(ATR)時代には、人の脳は、大脳皮質と大脳基底核、小脳の三つの部分が、それぞれ異なる役割をもちながら、学び、判断する回路を生み出している、という仮説をまとめる。ただ、ATRには動物実験の施設がない。もどかしさを感じていたとき、学際研究を重視するOIST設立構想を耳にする。銅谷は、開設準備にあたる旧知のノーベル賞学者、シドニー・ブレナーにメールをだした。「ぜひ、手伝いたい」。先行研究者の一人に選ばれ、理論と実践の環境を整えた。


OISTに移った銅谷は、脳内の神経細胞を光で刺激したり、計測したりする新技術を用いたマウス実験に取り組み、エサなどの報酬を得るために行動を学ぶ「強化学習」の脳内での仕組みをさぐった。神経伝達物質セロトニンが、待ちつづける「辛抱強さ」と深く関わることを見いだしたのは、実験の成果のひとつ。もともとロボットネズミのなかに「うつ状態」のロボットが現れたのがきっかけで、その成果ともいえた。

愛犬と一緒に日課のランニング。数々のトライアストン大会に参加している


銅谷には、多忙でも欠かさない日課がある。トライアスロンのトレーニングだ。早朝の小一時間、砂浜を走り、浅瀬を泳ぐ。サンディエゴにいたとき、ショートトライアスロンに出たのが始まり。ATR時代には研究所周辺の丘陵地帯を走り込み、2000年にフルトライアスロンを完走した。世の中には、お金のかかる道楽も、時間のかかる道楽もある。「でもトライアスロンは、体力も精神力も限界までつぎ込まないといけない。究極の道楽です」


競技仲間には「一番あきらめの悪いやつ」と言われる。昨年の大会では180キロの自転車走の途中でタイヤがパンク。40回ほど空気を入れ直し、最後はつぶれた状態のまま走りきった。


「仕事とは別の状態に、自分の体と脳をもっていけるところがいい。いろいろと忙しくても、この道楽に時間を使えるんだから、文句はいえないな、と」

(次ページへ続く)

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加

Popular article | 人気記事

さらに記事を見る
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示