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Breakthrough 突破する力 沖縄科学技術大学院大学(OIST)教授 銅谷賢治が挑む「脳科学」と「人工知能」の融合

ロボットからロブスターの胃袋へ

マウスを使ったニューロンの実験装置前で、共同研究するドイツ人准教授のベアン・クン(右)と話す銅谷賢治



自分が定めた研究テーマを突き詰める上で、学ぶべきことがあるなら、たとえ専門外でも飛び込んでいけばいい。それはそのまま、銅谷自身のあゆみにもかさなる。


人や動物がどうやって動き方を学んでいくか。東京大学工学部に進んだ銅谷がまずテーマにしたのが、それをロボットで再現することだった。考案したのは、手のひらにのる小さな学習ロボット。いま風にいえば、運動制御付きのAIロボットといえるだろうか。


ただ、銅谷は当時、第2次ブームのさなかにあった人工知能には、のめり込めなかった。専門家の知恵を丸ごとAIに移植する「エキスパートシステム」と呼ばれる注目の技術は、「この場合には」「こういう行動をとる」と場合分けしたルールをすべて書き出し、プログラム化する必要があった。「どう動かせばいいか、全部を言葉にすることはできないのでは」。スキーのインストラクターをしていた彼らしい直感だった。


修士課程を終え、そのまま助手に採用されたが、大学内にとどまることへのためらいもあった。雑用に追われ、研究に回す時間が限られるという不安も感じていた。ならば、一歩、外に踏み出してみよう。まず米カリフォルニア大学サンディエゴ校の生物学科の研究室で、ポスドク研究員になった。


向き合ったのは、ロブスターの胃袋。そこから神経細胞が束になった節をとりだし、ロブスターの胃がぜんどう運動を起こす仕組みをさぐった。「とても単純にみえる神経回路でも、複雑な動きを起こせることを実感した。ここから、どんな進化をするのか、進化論的なイメージももてるようになった」


次に席を移したソーク生物学研究所では、計算論的神経学を専門とするテレンス・セジュノスキーの研究室に入った。脳の神経細胞がどう結びつき、どんな信号をやり取りしているか。これまでの実験データをもとに、その仕組みを数式にまとめあげる。当時、世界ではあまり例のない研究室で、多彩な人材が集まっていた。囲碁AIの「アルファ碁」を開発した英ディープマインド社のCEO、デミス・ハサビスの先生だったピーター・ダヤンもその一人。「ここから各地に巣立っていった研究者の多くが、現在の脳科学やAI研究を引っ張っています」と、銅谷は振り返る。




(次ページへ続く)

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