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Breakthrough 突破する力 株式会社「美ら地球」代表取締役 山田拓がつくる「クールな田舎」

地域に受け入れられてこそ

英国から来た家族と雑談。事務所の壁には、トリップアドバイザーが毎年、高評価の施設に贈る「エクセレンス認証」が並ぶ。
Photo: Toyama Toshiki

2007年、山田は「美ら地球」を立ち上げ、翌年に同市中心部の古い町家に移住した。業務はこれまでの経験を生かした、企業や自治体向けのコンサルティングだ。


ところが、観光協会として「世界に通じる」基本計画を立てたものの、外国人旅行客が地域の暮らしに触れられるようなサービスを提供する事業者は現れなかった。これまで経験のなかった一般顧客向けサービスに「仕方なく」乗りだし、里山サイクリングを10年から本格的に始めた。


結果はすぐには出ない。サイクリングの初年度の参加者は約150人だった。銀行から借金をし、創設時からの社員の給料を大幅に下げた。自分と妻の収入も、年収に応じて決まる子どもの保育園代が無料になるほど下がった。「三度の飯より多く、やめようと思った」 ただ、山田が確信していた通り、里山体験ツアーは欧米などの旅行客に徐々に広がっていった。世界的な旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」には現在、利用者の投稿が700件以上あるが、ほとんどが5段階評価の最高点をつけている。あるコメントが、外国人客にとってのツアーの魅力を象徴的に語っている。「美しい田舎の自然と暮らしだけでなく、フレンドリーな地元の人たちとの人間的なふれあい……」


ニュージーランドから来た酪農業の男性はサイクリングの途中、ガイドの通訳を介して、地元の農家と牛の飼い方の違いについておしゃべりしていた。旅行客と会話するために、80代で英会話の勉強を始めた農家のお年寄りもいる。


山田は古民家の手入れをするボランティアを組織するなど、地域貢献も大切にしてきた。町内会など数ある地域組織の寄り合いには、可能な限り顔を出し、あまり口は出さないようにしている。「基本は地域のやり方に自分が学ぶ。面倒に思える地域のルールにも、意外と合理性がある」。保守的な土地柄で、地元の人たちがツアー客に好意的なのは、山田たちの姿勢が受け入れられてきた証しかもしれない。


地元に生まれ育っても一生に一度あるかないか。そんな晴れ舞台が、今年4月、山田に訪れた。ユネスコ無形文化遺産に登録された古川祭。勇壮な「起し太鼓」で、山田は地区から選ばれ、櫓の上に乗った。移住から10年目。「僕はずっと『よそ者』でいいと思ってる」。クールな山田はそう言いつつ、地域にしっかり根を張っている。


(文中敬称略)

(次ページへ続く)

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