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脇園彩/声だけで「人間」を描くメゾソプラノ歌手

客席の空気が心地良く張り詰めている。開演のベル。満場の観客が前のめりになる気配が伝わってくる。誰もがこの人の登場を待ち構えているのだ。


脇園彩。今年4月、川崎市で開かれた藤原歌劇団の公演で、日本でのオペラデビューを果たした若きメゾソプラノだ。藤原は、80年の歴史を誇るイタリアオペラの団体。脇園はロッシーニの喜劇「セビリャの理髪師」の、愛くるしくも計算高いヒロイン、ロジーナ役を演じた。


彼をものにするためなら、毒蛇にだってなって、罠をしかけてやるわ─。素朴で従順に見えていたヒロインが、「女の裏の顔」を軽妙に独白する第1幕のアリア「今の歌声は」。難度の高い技巧が相次ぐも、声の軸は一切ぶれない。装飾のひとつひとつが丁寧に旋律を縁取る。若い人ほど演技に歌が追従しがちになるものだが、目を閉じて聴くとよくわかる。この人がいかに、「声」だけに集中して生きている人かということが。


2014年からイタリア各地の歌劇場で相次いでデビューし、オペラの殿堂ミラノ・スカラ座の舞台にも立った。アルベルト・ゼッダやファビオ・ルイージといった名指揮者たちに絶賛され、彼らが率いる音楽祭にも招かれた。現在29歳、イタリアに渡ってまだ4年。保守的なイタリアのオペラ界で、アジアの新人がここまでのスピードで第一線に立つのは極めて異例だ。


イタリアに住む音楽ジャーナリストで、現在はコーディネーターや通訳なども務める井内美香はこう語る。「イタリア各地の歌劇場が、財政的な厳しさから、他国の歌手にも門戸を広げ始めているという実情はある。しかし、それを考慮しても彼女はずば抜けている。パッションを感じさせる演技、舞台姿の美しさ。とりわけイタリア語の発音の完璧さが、本場の関係者を驚かせている」


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