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Breakthrough 突破する力 [No.184]小沼大地/Konuma Daichi




「何かやろうぜ」

昨年出版した本を執筆していたカフェの前で。連日閉店時間の午前2時まで粘り、何度「お客様……」と声をかけられたかわからない
photo: Semba Satoru

そのころ、大学時代からの親友、向江一将(34)がシリアにやってきた。2人で山に登り、ふつふつとたぎる思いを語り合った。この世の理不尽さ、不平等さ、自分に何ができるのか─。朝まで語った結論は「日本で何かやろうぜ」だった。


向江が帰国してしばらくすると、シリアの小沼から小包が届く。入っていたCDを再生すると、画面の中の小沼が語りかけてきた。「あのとき、何かやろうぜって誓ったことを覚えているか?」。山頂で街の夜景を背に2人で撮った写真も同封されていた。裏には「日本で熱いことやろうぜ 大地」。


小沼はといえば、配属先のNPOで共に働くコンサルタントたちの仕事ぶりを見て、課題解決に向けて戦略的に進む手法にヒントを得ていた。ビジネスと社会貢献をつなぐことが自分の役割だ─。そんな答えが「降りてきた」。


協力隊を終えて帰国すると、その志に向かって突き進む。マッキンゼーに入社し、ビジネスや経営を学ぶ一方、向江たちと勉強会を始める。勉強会には起業家らを招き、延べ1500人以上が参加した。仕事は猛烈に忙しく、友人たちと議論する時間もない。ならば一緒に住めばいいと、向江たちと、当時は珍しかったシェアハウスを始めた。


また、マッキンゼーの社長に直談判し、社員が情熱を語り合う「アスピレーションナイト」も開いた。金曜の夜、会議室に集まっては、酒やつまみを囲んで自分の志や夢を語り合う会だ。


そんな経験を積みながら、社会貢献とビジネスをつなぐ「留職」のプランが具体的に形になっていく。勉強会で出会った松島由佳(31)と2人で事業を始めることにした。予定通り3年でマッキンゼーを辞めたのが11年の3月11日。すぐに東日本大震災の被災地で活動するNGOの現場に入り、2カ月にわたり支援物資の輸送管理を担った。


創業後しばらくは、企業に売り込んでも連戦連敗。それでも、最初の顧客は大企業にと狙いを定め、断られてもアドバイスをもらい、糧にしていった。


営業でいい線までいっても、「前例がないとねえ」と断られた。ならば前例を探そうと、米国に同様の事業を行っているNGOを見つけ、アポなしで松島と突撃訪問した。それが突破口となり、ついに顧客第1号としてパナソニックが「留職」を導入することが決まった。




(次ページへ続く)

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