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[No.174]きゃりーぱみゅぱみゅ/Kyary Pamyu Pamyu



大きなリボンにどぎつい原色の衣装。甘いような辛いような。バランスいいような悪いような。デビュー直後、当時18歳だったきゃりーぱみゅぱみゅ(23)に取材した時、記者はその個性に衝撃を受けた。


5年ぶりに対面したきゃりーは少し落ち着いた印象だ。「あの頃は、気持ちは無敵。なんでも自分でやってやるって感じ。いまは、チームで何かを作りたい。私がやりたいことって1人ではできないから」


今年3月、小雨が降る東大阪市花園ラグビー場でのライブ。きゃりーが芝生の上の特設ステージに姿を見せると、客席の空気が一変した。「(楽しすぎて)キレるっ!」。10代の女の子たちが、リズムに合わせて跳びはねる。会場は「きゃりー一色」に染まっていったが、本人は聴衆をあおるわけでもなく、曲間のMCは結構フツー。歓声と熱狂を前にしても決して感情過多にならない。


ステージに立つそんな自分を、きゃりーは子どもの頃に憧れた「美少女戦士セーラームーン」にたとえる。「普段は普通の女の子だけど、ステージの上では変身できる。マイクや衣装が変身グッズみたいなものかな」


所属するアソビシステム社長の中川悠介(34)はこう評する。「発想とアイデアで周囲を巻き込んで、ゼロから1を生み出せる。きゃりーはブームではなく、カルチャーだ」。作り物のキャラクターでもなく、「私そのもの」でもない。その個性が生み出す独特の世界観が、多くの人を魅了している。




運命を変えたスナップ


歌手デビューは高校卒業後の2011年。Perfumeなどを手がける人気プロデューサー中田ヤスタカとイベントで偶然出会ったのがきっかけだった。


まずは海外で火がついた。デビューアルバム収録曲「PON PON PON」のミュージックビデオを動画サイトで公開すると、たちまち話題に。大きなリボンやふわふわのブラウス姿のきゃりーが目玉や脳みそといったグロテスクなモチーフに囲まれて踊る独特の世界観が受け、ベルギーやフィンランドではiTunesの電子音楽部門で上位にランクイン。一躍、日本の「カワイイ」文化のアイコンとなった。


海外発信を先行させる戦略は中川によるものだった。「彼女のポテンシャルなら、売れない理由はない。やる価値はあると思った」と振り返る。 きゃりーは東京生まれ。幼いころから恥ずかしがりやで、「作文を人前で読むとか、そういうことがあるとおなかが痛くて仕方がなかった」。勉強が得意だったり、部活動に熱心だったりしたわけでもなかった。ごく普通の女の子が「変身」するきっかけが、原宿との出合いだった。


「スナップ、撮らせてもらえない?」 歌手デビューからさかのぼること2年前。冬の週末、友だちと東京・原宿のファッションビル「ラフォーレ」近くを歩いていて、雑誌「KERA」の編集部員に声をかけられた。「原宿を歩くおしゃれな人」のスナップ特集。どぎついメイクに母にもらった白いロングブーツを履いたきゃりーを撮影したカメラマンKAJIIは「洗練されてはいなかったが、主張を感じさせた」と振り返る。


3×2センチほどのそのスナップが、きゃりーの感性を目覚めさせた。読者モデルとして注目を集める中で、気付いた。「ファッションって、自分を解放する武器なんだな」


ブログやSNSに自らの「変顔」などユニークな画像を掲載。独特の言葉遣いによる発信も同世代から支持を集めた。「私が表現したいのって、メッセージっていうより頭の中のイメージなんです」ときゃりーは言う。彼女が表現する混沌とした世界観は、「第二の故郷」と呼ぶ原宿のイメージも上書きした。街にはきゃりーの作品のイメージに近い観光案内所が生まれ、訪日観光客向けのガイドブックで大きく紹介される。きゃりーは日本のとがった若者の聖地「HARAJUKU」を象徴する存在になっていく。


この現象について、デビュー当初からきゃりーを知るワーナーミュージック・ジャパンの鈴木竜馬(46)は「音楽の中田やアートディレクターら、一緒に作品を作るアーティストの存在が大きい」としたうえで、「彼女には存在を世に知らしめたいという強い欲求があると思う」と話す。



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