「ハゲタカ」執筆時、映画「ラストサムライ」サントラがBGMだった。
1月17日の夜、真山は30人あまりの出版関係者らと都内のレストランにいた。長編「コラプティオ」が直木賞の候補作になっていた。震災後の日本政治を描いた小説だ。
今回は落選——。知らせが入ると、みながっかりした表情になる。
だが、当の本人は笑顔だ。
「こうして待つ機会が、また増えた。次回も楽しみましょう」
2004年、外資系ファンドの日本買いを描いた「ハゲタカ」で作家として本格デビュー。のちにNHKがドラマ化し、優れた放送番組に贈られるイタリア賞のドラマ部門で最優秀賞を受けた。
気づいたら、経済小説の旗手と呼ばれていた。だが、編集者や知人は口をそろえる。「真山仁を経済小説家と思ったことは、実はあまりない」
ならば、真山仁とは何者なのか。
高校時代から小説家になりたかった。それは執念に近かった。2年生の夏休みにはすでに原稿用紙550枚の作品を書き、懸賞に応募したこともある。
書きたかったのは、社会派ミステリーや国際謀略の世界を描くスパイ小説。ジョン・ル・カレやフレデリック・フォーサイスなど、このジャンルで読んだ本は4000冊を超す。
大学を出ると新聞記者になった。「取材力や人脈を得て、わかりやすい文章を書けるようになるには、記者になるのが近道」と考えたからだ。
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