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Breakthrough 突破する力 楠田浩之                                                  樽の中で眠るワインの熟成ぶりを確かめる。

ブドウを一粒ずつ厳選したワインがニュージーランドにある――。

都内のワインバーで、そんな話を聞いた。 「収穫したブドウを選果する際、作業場にはピリッとした緊張感が漂います。日本人ならではの繊細な作業は、現地で『ボンサイ・ピッキング』と呼ばれているとか」。

バー店主の言葉に、ワイン初心者の私も引き込まれた。


南半球で秋が深まる4月下旬のある日、首都ウェリントンから車で1時間半ほど離れたマーティンボロを訪ねると、楠田は選果の真っ最中だった。みけんにしわを寄せ、傷ついたり、つぶれたりしたブドウの実をハサミで一つずつ切り離す。見た目に問題がなくても、口に含んで質が悪ければ房ごと捨ててしまう。


「おいしくないブドウでワインをつくれば味や色が落ちる。選果はワインの品質のために欠かせません」
機械を使って大量生産するワイナリーが多い昨今、楠田のように自らの目と舌でブドウを厳選するつくり手は減っている。

 

「日本人の完璧主義が、たぐいまれなワインを生み出している」。英国の著名なワイン評論家は、英紙フィナンシャル・タイムズで絶賛した。


現在、生産量は赤白あわせて年間1万本ほど。その7割を日本へ輸出する。ピノ・ノワール種のブドウでつくった赤ワイン(06年)は、08年にロンドンであった世界最大のワインコンテストで金賞を受賞。シラー種の赤ワイン(06年)は、日本航空の国際線ファーストクラスで提供されている。


日本人は黙って飲め

楠田がマーティンボロに移住したのは、いいピノ・ノワールができる土地と見込んだからだ。

 

大きな樽(たる)で熟成中のピノ・ノワールを試飲した。甘酸っぱくて、ラズベリーのような香りがする。「フランスのブルゴーニュ以外の地でこの香りをかいだのは、ここマーティンボロが初めてだったのです」と楠田は振り返る。


楠田のピノ・ノワールは、日本の店頭では約1万円。フランスの高級ワインにも引けを取らない値がついている。ワインの品質の高さに定評があることの証しともいえる。


ただ、ここにいたる道のりは、けっしてまっすぐではなかった。

 

(次ページへ続く) 

 


自己評価シート

 

 

 

 

 

 

どんな力が、夢をかなえるための「突破力」になっているのだろうか。

編集部が用意した10種類の「力」について、大切だと思う順番に並べる自己分析をお願いしたところ、独自に「縁」を加えて答えてくれた。

 

楠田浩之(くすだ・ひろゆき)

1964年、埼玉県出身。88年に慶応大学法学部を卒業し、富士通で海外営業を担当。92年にオーストラリアの在シドニー日本国総領事館に転職。97年、独ガイゼンハイムのヴィースバーデン専門大学ブドウ栽培ワイン醸造学部に入学し、ワインづくりを学ぶ。卒業後の2001年5月にニュージーランド・マーティンボロに移住。同年10月に「KUSUDA WINES」を設立。

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