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Break-through 突破する力 芝原仁一郎

8秒、8秒、8秒。

猛牛の背をまたぐ直前、芝原仁一郎の頭は8秒でいっぱいになる。

「こいつに8秒乗ってやる、絶対乗ってやる」

牛に挑んで15年、芝原は全米プロロデオ協会に登録されたプロのブルライダーだ。暴れ牛の背にまたがり、8秒乗り切れば合格、8秒もたずにふり落とされたら失格。乗りこなせば賞金が得られるが、ふり落とされれば命も落とす。

馬や牛と格闘するロデオ8種目で、ブルライディングほど危険な種目はない。米ワイオミング州では、跳びの強烈な牛に吹き飛ばされ、腰の骨を折った。カナダ・アルバータ州では、牛の頭に顔をガンガンぶつけて失神。額やほおの骨を5カ所折った。

それでも、ロデオから足を洗う気はまったくない。「いまは人生を賭けてますから。ブルライディングというスポーツが僕の唯一最大のテーマですから。どこまでやれるか限界を知りたいんです」

サラリーマン家庭に育ち、父の転勤で函館、岐阜、東京へと引っ越した。中学は陸上部、高校は野球部。大学ではラグビーに熱中した。

スポーツに見切りをつけ、1993年春、芝原はホンダの系列会社に入社する。東京・青山の本社で辞令を受け、三重県の鈴鹿工場で研修に参加し、埼玉県狭山市内の系列ホテルに勤務した。

だが、どうしても先々の人生が思い描けない。このままサラリーマンとして家庭を築き、住宅ローンを組み、子どもを育て、定年を迎えるという自分が想像できなかった。

就職2年目の夏休み、旅先の米テキサス州で初めてブルライディングを見た。牛が巨体を弾ませ、背に乗った人間を吹っ飛ばす。

「何て凶暴なんだ」「この迫力は何だ」「何でここまで熱中できるんだ」

見ていて、からだの芯が熱くなった。

もともとカウボーイに憧れはあった。大学時代、手にした雑誌のウエスタンファッション特集にひかれた。ブーツにカウボーイハット姿で90年代の東京や横浜を歩いた。そんな、単なるファッションだったカウボーイが、この旅を境に、自分の究極の生き方に変わった。

半年後、会社に辞表を出す。「実は前々からカウボーイになりたいと思ってまして……」。退社理由を説明すると、上司は驚きで目をしばたたかせた。慰留の言葉はなかった。

(次ページに続く)

自己評価シート

 

 

自分にどんな「力」が備わっているのか。何が強みなのか。編集部が用意した10種類の資質に順位をつけてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

芝原仁一郎(しばはら・じんいちろう)

1971年、北海道函館市に生まれる。
93年、ホンダの系列会社に就職。95年、ワーキングホリデービザでカナダへ。ロデオを始める。96年、ロデオ資金を稼ぐため東京と米、カナダの渡り鳥生活を始める。03年、ロデオのプロの試合に初参戦。09年、プロ登録して初のシーズンに入る。

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