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役所の仕事は、とかく遅いというイメージがつきまとう。そこに、新しい風が吹き始めている。
「ワンデーレスポンス(即日回答)」。公共工事を請け負った業者から質問を受けたら、役所の担当者は1日以内に回答しようという取り組みだ。国土交通省は2009年度から国直轄の工事約1万2000件すべてで実践している。
波及効果は小さくない。現場は自然相手。予期せぬ事態が起き、業者が発注者に指示を仰ぐのは日常的だからだ。
その考えを全国に広めた「伝道師」が経営コンサルタント、岸良裕司だ。国の出先機関や自治体に出向き、「これで公共事業が変わる」と説いて回る。
国交省の事務次官、谷口博昭は「公共工事にしみついた悪いイメージで、職員は内向きになっている。変革には外の力が必要。彼の若さ、明るさ、説得力の高さに期待している」と言う。
公共工事の建設投資額は落ち込み、業者は受注競争の激化に苦しむ。しかし、岸良には、苦境がチャンスに映る。
彼の才能が公共事業改革に生かせると見いだしたのは、国交省北海道局長の奥平聖だ。知人の紹介で、5年前に岸良と出会った。北海道の建設業者を指導し、工期を20%短縮、利益率30%を達成したという。当初、奥平は「話がうますぎる」と警戒した。だが、会ってみると、岸良の話は人を離さない。30分の予定だった面会は、気がつけば4時間を超えていた。
「発注者責任を果たそう」と発破をかけても現場が動かず悩んでいた奥平に、岸良は言った。
「精神論では、人は動きません」
因果関係で相手の利点を分かりやすく説明し、話に「面白さのビタミン」を加えると、納得して動いてもらえる、というのだ。
「行政の即日回答→工期の短縮で業者の利益が増加→早期完成で住民も喜ぶ」
岸良がこんな絵を描いてみせたのを受けて、奥平は、「できるだけ早く」だった業者への回答を「1日以内」に改め、試行。アンケートでは建設業者の86%が評価した。
朝日建設(富山市)社長の林和夫は、岸良の考えに違和感を覚えた。講演に訪れた岸良に「役人が1日で返事するわけがない」とかみついた。岸良はひるまない。「業者が変われば、役所も変わるんです」。役所に従っていれば仕事がもらえる、と考えていた林には、新鮮に響いた。林は思う。「彼をドン・キホーテにしてはいけない」
即日回答の究極の目標は、官民が目的を共有して、工程管理能力を高め、抜本的な経営改善につなげること。道は半ばだ。
(次ページに続く)

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1959年、埼玉県生まれ。
東京外国語大学ドイツ語学科を卒業し、84年、京セラに入社。海外営業、新市場開発、マーケティング戦略を担当。03年、ソフト開発会社「ビーイング」に入社。取締役兼経営推進室長を経て最高執行責任者(COO)に。08年、ゴールドラット・コンサルティングに入社。ディレクターに就任。