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Break-through 突破する力 妹島和世

11月10日午前1時すぎ。イタリアからニュースが飛び込んできた。来年8月に始まる世界最大規模の建築展、第12回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展の総合ディレクターに妹島和世が決まったというのだ。日本人初、女性初。

1時半過ぎ、非常識な時間と思いつつ、コメント取材のために、彼女の設計事務所に電話してみた。
「はいはい」。妹島はごく普通に電話口に現れ、「建築の夢を示す場にしたい」と抱負を語ってくれた。事務所をひきあげるのは、毎晩午前2時から3時。まだ「通常の業務時間内」だったのだ。

睡眠時間は3、4時間で、休みもほとんどとらない。10月は4回、海外に出張した。自宅にはテレビもないし、趣味もない。楽しみは、コムデギャルソンを買うことぐらい。でも、悲壮感はみじんもない。いつもカジュアル。そこから、従来の建築観をくつがえす作品を生み出してきた。

国内で言えば、日本建築学会賞などを受けた金沢21世紀美術館(2004年)。巨大ガラス円盤に、展示室となる直方体がいくつも刺さったような外観は、現代アートさながら。中に入ると、都市空間を歩むような楽しさがある。

どこまでも透明で、浮遊感が漂う。そして、何より大胆。
例えば、出世作の再春館製薬女子寮(1991年、熊本市)は、豪快な物言いで知られる建築写真家の二川幸夫が、「こんなムチャをやるやつが日本から出たのか、とうれしかったね」と振り返る一作だ。現代的な伸びやかさの一方、長い建物の左右に4人部屋を20室ずらりと並べ、「監獄みたい」とも言われた。中央の吹き抜けに、トイレを島のように5カ所点在させたのも、驚きだった。

妹島自身は、しかし、「旅館なんかで、朝、みんなが1カ所のトイレに行くっていうのは、いやじゃないですか。なるべく離れた方がいい、というのが私の感覚です」と話す。

「変わったことをやろうという気持ちは全然ありません。こっちのほうが、うまく楽しく使えるだろう、あるいは使いたくなるだろう――。それが私にとっての『使いやすさ』で、合理的に考えているつもりです」。世に流通する「使いやすさ」とは、異なるかもしれないが。

「既存の物差しにとらわれないラジカルさは、世界をまっさらな目で見る普通の女の人の身体のリアリティーに基づいている」。妹島の代表作の一つ、金沢21世紀美術館の立ち上げにかかわり、現在は東京都現代美術館チーフキュレーターの長谷川祐子は、そう評する。

(次ページへ続く)

自己評価シート

 

 

 

 

 

 

自分にどんな「力」が備わっているのか。何が強みなのか。編集部が用意した10種類の資質に順位をつけてもらった。

 

 

 

 

 

 

妹島和世(せじま・かずよ)

1956年、茨城県生まれ。
81年に日本女子大学大学院(住居学)を修了後、伊東豊雄建築設計事務所に。87年に独立し、妹島和世建築設計事務所設立。95年、SANAA設立。今も、両事務所の社長。01年からは慶応大教授も務めている。日本建築学会賞、毎日芸術賞、ベネチア・ビエンナーレ建築展・金獅子賞(最高賞)など、受賞は多数。現在、「すみだ 北斎美術館」(東京都墨田区)などを設計中。

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