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Break-through 突破する力 篠宮龍三

海の中には、太陽が消える瞬間がある。

篠宮龍三(33)がそれに気付いたのは、2年ほど前のことだ。
空気のタンクをつけず、一息で潜る距離を競うフリーダイビング。水面から海 の底へ。足につけた大きなフィンと体を、Sの字を描くようにしならせ、まっすぐに下りていく。
30m付近で人の体は浮力を失い、自然落下し始める。海の青は深まり、水面をとらえる視界の中で、揺らめく太陽の光や船影は一気に遠ざかる。

「水深80mくらいを過ぎたときだった。それまで足元にゆらいで見えていた太陽 の点が、すっと消えたんです」
以前はやっとの思いで到達していたこの深さに、「散歩するように」近づけるようになった。 その余裕が生んだ発見だった。

深い海では、吸い込んだ空気に含まれる窒素が、酒に酔うような麻酔作用 を起こす。80mなら地上の9倍の水圧で肺はこぶし大につぶれ、窒素の濃度も9倍になる。

「80mを過ぎると、ほろ酔いから泥酔状態になる。頭の中がぐるぐると回り、 耳鳴りがしたり、幻覚を見たりする」

篠宮は、目の前のロープを見据え、キックの回数を数えて意識を保つ。

フリーダイビングには8種目がある。その中で篠宮が得意とするのは、「 コンスタント・ウィズ・フィン」だ。重りを使わず、フィンの力だけで潜る。前日に申告した深さに、てのひらに乗るくらいのタグが設置され、それを取って浮上する。

篠宮は現在、世界ランク3位。105mのアジア記録を持つ。
105mという数字は、篠宮には特別な意味がある。憧れのフランス人フリー ダイバー、人類で初めて100mに到達したジャック・マイヨール(1927~2001)が、生涯をかけて打ち立てた記録だからだ。

(次ページに続く)

自己評価シート

 

 

 

自分にどんな「力」が備わっているのか。編集部が示した10の資質にランクをつけてもらうように依頼したところ、「語学力」を「表現力」に差し替えた上で、次のように順位をつけた。

 

 

 

 

 

篠宮龍三(しのみや・りゅうぞう)フリーダイバー

1976年、埼玉県生まれ。
法政大工学部を卒業後、浄水場の設計会社に5年間勤務。03年、76mの記録を出す。04年、プロに転向。08年、コンスタント・ウィズ・フィンでアジアで初めて100mを記録。この種目で100mを超えたダイバーでつくる「100mクラブ」の7人目の会員になる。現在会員は10人で、世界記録は122m。

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