TOPへ
RSS

Break-through 突破する力 清水敏男

91年、水戸芸術館の現代美術センター芸術監督に。尊敬する建築家が声をかけてくれたという。
初代の大物総監督らが突然辞職し、誰も手を出さない真空状態の時だった。
「ゼロどころかマイナスからのスタートだね」。業界の重鎮に言われても、清水は現代美術に特化し、展示も運営も任される魅力を選ぶ。こんな時でないと37歳で現場トップはありえない。

冷戦の終わりとともに世界のアートのマーケットは一つに。人の交流も盛んになるばかりだ。
実力のある、つまり資金を集められる館は独自の企画で世界から客を呼ぶ。
アーティストの側も南米やアフリカからも情報発信できる変わりようだ。
日本にいる自分たちも、その輪の中に入りたい。地球の裏側にだって会いにいくしかない。
なにしろ現代美術は「生きもの」で、旬を逃せない。

水戸時代の96年、上海ビエンナーレに招かれ、かの地の美術館長との交流が始まった。現代美術の開放に走る中国との仕事は面白い。翌年に独立した。
上海に100回は渡航したのではないかという。

現在、パブリックアートの注文は自治体から民間にシフトしてきている。
経済の風向き次第で作品が一回り小さくなる。あの手この手を準備しても通じない相手はいる。
「気が長いのではなく、いまか、いまか、とずっと構えているから釣れる」。アルジェリアの釣り名人にそう聞いた。自分もたくさんの引き出しをいつでもあけられるように「眼」を鍛えて、いまか、と待つ。

昔の仕事仲間は「一緒に海外に交渉にいくと、ギャラリーや個人所蔵家までこまめに何度も回る。今回のためだけでなく、次の準備なんだとわかりました」。

高校時代と同じ、根は美術ファンだという清水は、気になる展覧会を、今は2度見に行く。最初は好きな作品のいいところだけ見て楽しんでくる。
2度目はプロのいじわるな眼で、展示のあらを探すのだ。「自分ならこうする」と。

(文中敬称略)

自己評価シート

 

人と人をつなぐプロは、「協調性」を最下位に置いた。「相手の話をよく聞くのは、言うなりにならないため。最後はこちらの思うように進めたいから」

迷わずトップに選んだのが「集中力」だった。子ども時代はマンガに読みふけると誰が話しかけても気づかなかった。いまも、考え事を始めると同じ状態になるそうだ。複数の計画が並行して進み、旅の多い日常では欠かせない力である。

2位は「体力」。20代での強烈な体験が、アルジェリアでアメーバ赤痢にかかったこと。
入院したくても体が動かない。パリの病院に電話で薬の処方を聞き、自力で治したが、後から「死んでもおかしくなかった」と言われたのだという。

ただし、「あのときを思えば、どんなつらいことも乗り切れる」と家で話すと、「『またお父さんの、あの話が始まった』と、誰も聞いてくれないんです」。

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

世界のどこかで、日本の明日を考える 朝日新聞グローブとは?

Editor’s Note 編集長 新創刊のあいさつ

このページの先頭へ