TOPへ
RSS

Break-through 突破する力 川名康浩

 

午後11時、米シアトルの劇場で、新作ミュージカル「Catch Me If You Can」の試演が終わった。観客は2000人超、口々に作品の出来や印象などを語りながら出口へ向かう。

「主演男優が最高!」
「でも歌が多かったな。全体でも3時間だよ。長すぎない?」
「踊りもまだちぐはぐに見えた」
「いやこれは見ごたえ十分。傑作だ。必ずヒットするよ」

客同士のそんな会話をひとつでも多く拾おうと、ブロードウェー・プロデューサー川名康浩(48)は、通路の隅で耳をそば立てていた。見終えた直後のつぶやきにはウソがない。どれも脚本の練り直しや演出見直しの糧になるからだ。

シアトルでの試演は3週間に及んだ。川名は連日、客にまじって一般席から舞台を見つめた。どの場面で客があくびをかみ殺したか、どの演技で狙った笑いが起こらなかったか、どの俳優のダンスが浮いて見えたか。課題を毎夜の打ち合わせで検討し、反応がかんばしくない場面はばっさり削った。

「Catch Me」は、ニューヨークの劇場街を15年間走り回ってきた川名が、独立したプロデューサーとして初めて世に出す作品である。

来春、ブロードウェーでの本公演に向け、これから予算や劇場の規模、俳優の顔ぶれが決まる。どれも川名とアメリカ人プロデューサー2人の手腕次第だ。

作品の舞台は60年代の米国、当時あこがれの職業だったパンアメリカン航空のパイロットになりすました17歳の若者が、天才的な話術と詐術を駆使して大金をつかむ。ばれると今度はニセ医師として病院にもぐり込み、最後は弁護士のふりをして周囲を手玉にとる。

「やれるものなら捕まえてみろ」。10代の詐欺師がベテラン捜査官を挑発する。
追いつ追われつの2年間、ふたりの間には奇妙な連帯感が芽生える――。

作品は実話に基づき、主人公の詐欺師フランク・アバグネイルは自分の歩みを小説にして出版、スティーブン・スピルバーグの手で映画化された。

川名は、舞台作品化する前、アバグネイルに直接会っている。話してみて、自分が似ていることに驚いた。「元手もなく、つてもなく、専門分野の勉強をしたわけでもないのに、度胸ひとつで、憧れた世界に飛びこんでしまう。そっくりでした」

(次ページへ続く)

自己評価シート

 

 

 

自分にどんな「力」が備わっているのか。何が強みなのか。編集部が選んだ10種類の力を提示したところ、上位の四つを独自の表現に差し替えた上で、自信のある順に並べた。

 

川名康浩(かわな・やすひろ)ブロードウェー・プロデューサー

1961年、東京・荻窪生まれ。84年、俳優をめざして、劇団四季演劇研究所に入る。93年に渡米、ニューヨーク大で映画を専攻。98年、ニューヨークで川名エンターテインメント社を設立した。

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

世界のどこかで、日本の明日を考える 朝日新聞グローブとは?

Editor’s Note 編集長 新創刊のあいさつ

このページの先頭へ