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Break-through 突破する力 堀 義人

住友商事の中で、新たなビジネスとして提案したが却下された。起業を決意し、会社を辞める。
92年、スタートは東京・道玄坂の雑居ビル。3時間2万円の貸し教室でビジネススクールを始めた。受講生は20人だった。

留学中に伴侶と出会った。出産費用の支払いもできない。そんなぎりぎりの生活を味わった時期もある。

ビジネススクールが軌道に乗り始めた96年、ベンチャー投資のためのファンド作りに乗り出す。「第二のソニー、ホンダを作りたい」との思いからだ。

そのとき堀を助けたのが、斑目力曠(まだら・め・りき・ひろ)だ。
電子部品メーカーのネミック・ラムダ(現TDKラムダ)の創業者で、密教の僧侶でもある。
堀は、ほとんど面識もなかった斑目を訪ね出資を要請した。
斑目は「1分で1億円の出資を決めた」。堀から「もうかります」という言葉が出なかったからだ。
「お金は追いかけるものではなく、ついてくるもの。ビジネスは良縁がすべて」
斑目の仏教思想は、実は堀がさまざまな場面で決断を迫られるときの基軸になっている。だから、ぶれない。迷わない。
堀は言う。
「悩むことは非生産的。走りながら問題解決しないといけないから、悩む暇もない」

堀と同じころ、HBSに通った仲間に、ボストンコンサルティンググループ日本代表の御立尚資(み・たち・たか・し)がいる。
「当時からきっと枠をはみだしちゃうんだろうなあ、という雰囲気があった。一度思いこんだら命がけ、有言実行で自分を追い込むタイプ。意志の力で悩みを断ち切れるところが常人とは違う」

大学院は株式会社を経て08年に学校法人として認められた。200人近くが巣立っている。不況の中でも昨年度は増収増益で、経営は順調だ。
ファンドが育てた企業も50社を超え、ワークスアプリケーションズやグリーなど10社以上が上場を果たした。

「成功者ですね」と問いかけたら、あっさりと認めた。
「社会的な地位も家庭も、恵まれていると思いますよ」
身長180cm。水泳で体を鍛え、学生時代にファッション誌の表紙を飾ったこともある。
家に帰れば、12歳、10歳、8歳、6歳、4歳の5人の息子たちと妻の家族7人で、一緒の部屋で枕を並べて寝る。

派手なパフォーマンスは嫌い。
自己顕示欲。権力欲。金銭欲。これらを追い求めると、本来やりたかったことからかけ離れてしまうのではないか、と思う。
起業家を育てる米国の良さを認めつつも、株主の利益だけを考えるような「強欲資本主義」とは、相いれないと思っている。

グロービスも、グループ全体で上場すれば数百億の時価総額といわれるが「上場しない」と決めている。
「上場したとたん、人が変わる起業家たちを何人もみた。100億円持っている人は不幸ですよね。1000億円よりも小さいと思ってしまうから」

2022年、設立30周年の年に、グロービスをアジアで最も評価の高いビジネススクールにするのが、今の目標だ。
売上高やROE(株主資本利益率)などの数字ありきではなく、社会への貢献を自然に売り上げ増に結びつける。そんなリーダーを一人でも多く増やしたい、と願う。

自己評価シート

 

1位の「志力」とは、自分の生きていく方向を見定める力。堀の造語である。2位の「使命力」も似通っている。生涯で何を成し遂げるべきなのかを認識し、使命感に従って生きていく力だという。
多くの人間と共感できる「人間力」、哲学や道徳を理解する「倫理力」がそれに続く。

堀を学生時代から知る銀座柳画廊副社長の野呂洋子は、堀を「ネットワーク作りの天才」と評する。
人の懐に自然に飛び込み、友人同士をつなげていく。同世代の経営者らを集めての泊まりがけの会議を、10年以上前から毎年のように実行してきた。

国際会議にも飛び回る。8月にはオーストラリアの会議、今月には中国で開かれたアジア版のダボス会議でパネリストを務めた。

「他流試合」を通じて、日本への愛着はむしろ募るという。偏見が入ったような日本批判が出ると、真っ向から反論してしまう。いつもストレートな、堀らしいところだ。

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