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Break-through 突破する力 立川円

雲が晴れ、コックピットの窓に故郷の港町が広がった。「神戸タワー、Good evening」。日本航空(JAL)の副操縦士、立川円が上空から管制に呼びかける。

滑走路が迫る。着陸時の天敵、追い風が強い。機長が立川と相談し、旋回して逆側に回り込み、風下から着陸すると決めた。「ヘディング」「フラップ」。指示がタイトになる。立川は短く復唱、方向を設定するダイヤルに手を伸ばし、揚力調整のレバーをセットする。「魔の11分」と呼ばれる離着陸時、機長は操縦桿に集中し、副操縦士は管制交信、計器の設定などを一手に引き受ける。手際が安全を左右する。

100人を乗せたボーイング767型機は左に傾き、大きく弧を描き始めた。高度計に視線を移すと、580フィート(約170m)。「大丈夫、ギリギリの高度を維持してる」。機長が操縦桿を水平に戻す。まっすぐ延びた滑走路の誘導灯が、コックピットの正面にぴたりと収まった次の瞬間、機体は静かに滑走路に吸い込まれた。
午後6時51分、4番スポットに到着。立川はまとめ髪をほどき、背にかかる栗色の髪を無造作に整えた。羽田から札幌、札幌から神戸、この日2回のフライトの疲れは窺(うかが)えない。

ブリスベン、グアム、北京、クアラルンプール、バンコク、香港、札幌、神戸。立川はひと月の約半分、世界の空を飛ぶ。機長にかわって操縦桿を握ることも多い。ボーイング767はJALの主力中型機。飛行回数は多い。時差や温度差もつきまとう。同型を担う約600人のJALのパイロットの中で、立川は最初の、そして唯一の女性だ。

日本の主要航空会社にいるパイロット約6300人のうち、女性は97年の第1号以来、5月現在で23人。機長はまだいない。JALでは4人目の立川が目指すのは、その未到の領域だ。

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自己評価シート

 

 

 

 

 

自分にどんな「力」が備わっているのか。何が強みなのか。本人の「独断」により、自信のあるものから順番に並べてもらった。

 

立川円(たちかわ・まどか)パイロット

1977年生まれ、神戸市出身。
00年、関西学院大文学部卒業後にJALスカイサービスに入社。01年、航空大学校に入校。03年、日本航空に入社。米カリフォルニア州のナパなどで訓練。06年4月、ボーイング767副操縦士に昇格。09年5月末現在、総飛行時間は2283時間、着陸回数は1061回。

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