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Break-through 突破する力 山中伸弥 京都大学教授 科学も情報戦 幅広いネットワークで、土壇場の勝負を制した


激烈な競争社会で、アメリカ人の同僚たちから頭一つ抜け出すために藤森が続けた努力は、並ではない。ことあるごとに、自分の考えをパワーポイントで1枚にまとめることを習慣にした。疑問があれば、その日のうちに人に聞き、自分で徹底して調べる。「昨日はまったく知らなかった製品のことを、翌日には担当者をしのぐ情報を携えて顧客に説明する。どんな勉強をしているのか」。同僚や部下は舌を巻く。

顧客や社内へのプレゼンテーションの準備は、ことに周到だ。ネーティブのようには英語を操れない自分が、どうしたら正確でインパクトの強いプレゼンができるか。

「相手を惹(ひ)き付けられるかどうか。勝負は最初の30秒」と藤森。テープに言いたいことを録音して、繰り返し聞くようにした。20回ぐらい改善を重ねると、「最後は『いいねえ』と自分に酔うぐらいになります」という。

自分に酔う――。目の前の仕事の重圧に押しつぶされがちな常人には、おいそれと吐けない言葉だ。「嫌なことがあっても、楽しいことを考えることで打ち消す。そうすると、いい結果がついてくる。GEのポジティブな明るい社風は、僕にあっている」

藤森の底抜けの「前向き思考」は、天性のものらしい。
東京の高校では、からきし弱い野球部にいた。なのに「100%の力を出せば、プロになれる」と疑わなかった。女の子にも、もてなかったが、「自分ではもてないのが不思議と思っていた」。日商岩井にいたころも「普通にやれば、社長か副社長にはなれるだろう」と考えていた。

米国で仕事に没頭していたころ、日本のプロ野球選手だった野茂英雄が単身、海を渡って大リーグ゙に挑んだ。「野茂のすごいのは、自分を信じたこと」。自身と重ね合わせた。
医療事業部でも「変革」をまかされたと判断し、迷うことなく事業の方向性を180度変えた。画像のスピードアップに力点を置いた製品開発をしていたが、顧客と話しているうちにニーズが違うと感じたからだ。

藤森にも挫折や逡巡、コンプレックスを抱くことはあった。だが、彼の「らしさ」は、そうした「弱さ」を自分の潜在力を信じ切ることで克服し、まっすぐ先を見すえ続けたことだ。そうやって、アクセルを踏み続けてきた。

若い頃の藤森を知る人々の評は「残業をいとわない体育会系タイプ」「納得しないと動かない。でも、リーダーという感じではなかった」。そんな藤森がGEで成功した理由を尋ねると、「アメリカ人になりきったからでは」と口をそろえる。
外資系では、ことさらドライな判断を迫られることが少なくない。日本GEは昨年、金利の過払い問題で苦境にたつ消費者金融をはじめとした個人向け金融事業を新生銀行に売却した。藤森は「ビジネスは感情では動けない」
と言ってはばからない。部下には、弱みを見せない。湿度0%、徹頭徹尾アメリカ流――。

その藤森の目には「かつて世界に挑戦したソニーやホンダの創業者のような元気が、今の日本人になくなっている」ことが気にかかる。

ただ、GEが象徴する「強い米国」は今、深刻な不況に見舞われている。GEの08年の業績は前年比22%の減益。イメルト会長は一時、照明や家電など最も歴史のある事業のスピンオフ(分離・独立)などを検討した。トリプルAだった格付けの引き下げも現実味を帯びる。

あなたが信じてきたアメリカの覇権もそろそろ終わりでしょうか、と藤森に水を向けてみた。

「アメリカには学ぶ力がある。ほかに世界を牽引(けんいん)できる力をもつ国がない以上、これからもアメリカがトップであり続けるでしょう。GEも必ず2年以内に復活しますよ。そうでなければ、それはGEではない」

藤森はそう答えた。明るく、力強く、藤森のままに。

 

自己評価シート

  

藤森がリーダーに必要だと考えるのは、目的達成への明快な「ビジョン」、それを周囲に的確に伝えて理解させる「コミュニケーション」、そして部下の能力を見極め、個々の可能性を引き出して実力以上の結果を生む「実践」という3つの力だ。

これを支えるのが1~5。なかでも、リーダーの責任を負う者に、もっとも求められるのは「決断力」だという。「結果は、決断の後からついてくるもの。大事なのは、むずかしい局面で右か左かを選ぶことができるかどうか」との言葉には、瞬時の決断を繰り返しつつ世界とわたりあってきた藤森の自負がこもる。

逆に7~8は「自分にないもの」だ。チームワークを重んじる藤森だが、ただ相手に歩調を合わせる、という意味の「協調性」なら、意に介さない。「語学力」が7番目とは、やや意外とも思えるが、「自分より英語がうまい日本人は、いくらでもいるでしょ」。ただし、ズバリと結論を先に言う英語的な表現のほうが、日本語より自分には合っているという。

 


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