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ブレグジットのやめ方

[第216回]園部哲 翻訳家

ペーター・ヴォールレーベンの『The Hidden Life of Trees』は、ドイツ語からの英訳本で、邦訳(ベストセラーリスト参照)もある。副題の「木々は何を感じ、どのようにコミュニケートするか」が本書の内容を良く表している。木が社会的生物であることを教えてくれる本である。


昔から草木にも感情があるというおとぎ話のような説があるが、それに似た「驚くべき話」を科学的説明で補強して聞かせてくれる。例えば第2章の「木の言葉」はアカシアの木が仲間を救う話。キリンに葉を食べられたアカシアは数分以内に有毒物質を葉に送り込む。キリンはこれに気づいて別のアカシアを食べに行くのだが、わざわざ100メートル以上離れた木を選ぶ。最初にかじられたアカシアが警報ガスのエチレンを出し、これを受信した近接するアカシアがこぞって毒の放出を準備するからだそうだ。また、ある植物の根が220ヘルツの音を発し、別の株の根っこがその音源方向へ先端を向けたという実験など。他にも、渇水時に「喉の」渇きを超音波の悲鳴で表現する木とか、子世代を「教育する」親世代の木の戦略、死にそうな木を隣の木々が助ける話など。山歩き、森林浴の好きな人たちには開眼の書になるだろう。


ドイツ人は「森の民」と形容されるだけでなく、2002年の憲法改正で「自然的生存基盤および動物を保護する」と憲法に書き入れた実践的な人々でもある。昨年「森林アカデミー」を創設した著者は、そうした良きゲルマン的伝統の直系の伝道師であり活動家なのだ。


(次ページへ続く)

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