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ヒラリー「敗北」を語る

【第214回】宮家あゆみ ライター・翻訳者


『What Happened』は2016年の米大統領選に敗れたヒラリー・クリントン氏の回想録。本書は発売1週間前からアマゾンのベストセラーリストで1位となった。米国民の間でのヒラリーの存在感の高さが証明された形だ。


本書が注目を集めたのは、勝利が確定視されていたヒラリーが何故負けたのか、ヒラリーに何が起きていたのかを彼女自身から聞けるからだ。この本で彼女は、トランプ氏はもとよりジェームズ・コミー前FBI長官やバーニー・サンダース氏、ロシアのプーチン大統領や、メディアなどへの批判を展開している。


特にトランプ氏については、彼は嘘つきで、歴史上最も大統領の資質に欠ける人物としている。2回目のテレビ討論会で、ヒラリーが話している間じゅう、トランプ氏がすぐ後ろにいた。彼女は平静を装っていたが、本当は「離れてよ、気持ち悪いやつ! 私に近づかないで。女を脅すのが好きなんでしょうけど、私には通用しないわ」と言ってやりたかったと言う。


コミー前長官に対しては、投票日の直前に国務長官時代の私的Eメール使用問題に関する調査を再開したことに言及。当時、同じFBI内で調査が始まっていたロシア疑惑について公表しなかった理由は何なのかと糾弾している。ニューヨーク・タイムズ紙に関しては、彼女の政策内容よりもEメール問題を取り上げ、一面を使って執拗に報道したことが、彼女の得票数下落に決定打を与えたとしている。


一方で、自分の失敗を素直に認め、後悔の念も口にしている。Eメール問題が浮上した当初、コミー前長官に反論をしなかったこと。白人労働者たちへの演説で失言をしてしまったこと。ロシアの選挙介入疑惑について選挙戦で言及しなかったことなど、いつどこで、なぜそうなったのかを正確に分析している。


本書に対しては、「特に目新しい事実はない」「女性だから負けたというのは言い訳だ」といった意見も聞く。だがヒラリーが様々な批判を承知の上で本書を出版したのは、第一に米国民主主義の未来を危惧しているからであり、第二に女性の権利を訴え、女性の未来を支援したいと思っているからだろう。大統領選への再出馬はせず、今後は政治家を志す女性を支援する活動に力を入れるという。



(次ページへ続く)

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