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ヒラリー「敗北」を語る

【第214回】宮家あゆみ ライター・翻訳者

トランプ候補vs番記者のガチンコ・バトル


『Unbelievable』は、2016年の大統領選期間中、米NBCテレビなどでトランプ陣営の番記者を務めたケイティ・ターの手記である。ケイティはトランプ陣営の選挙活動を510日間にわたって密着取材。公の場で何度もトランプに「大嘘つき」「三流記者」と罵倒されたことで、逆に一躍世に名が知られることになった。


報道では伝えきれない裏話を、ケイティは軽快に語っていく。初めてトランプ候補を独占インタビューした際には、質問内容がネガティブすぎると抗議された上に、内容をカットせず、収録したインタビューすべてを放送するよう要求された。コメントを取るため記者席で待機していたところ、姿を現したトランプ候補からいきなり頰にキスをされたこともある。


トランプ支持者からは、彼女を誹謗中傷するメールが殺到。演説会場の取材では護衛がつくようになった。

トランプ候補を追いかけるケイティの奮闘ぶりも面白い。トランプ候補は自家用ジェットで移動するが、ケイティたちは民間機のフライトや宿泊先の確保に追われ、取材を終えてホテルに戻るのは深夜。早朝にはまた次の町へ移動だ。


各メディアの番記者たちとは長期間、同じ場所で顔を合わせるため、次第に親しくなるが、現場ではライバルだ。次の取材場所をどこにするか。どうやって取材に有利な場所を確保するか。常に気をぬくことができない。


トランプ候補の番記者の仕事を引き受けた当初は、彼はすぐに失脚し、おそらく数カ月で仕事は終わると思っていたという。それが約1年半もの間、休みはほとんど取れず、恋人との関係も自然消滅してしまった。だがトランプ候補に攻撃され続けた経験があったからこそ、本書を出版することもできた。現在、ケイティはNBC系列局で午後のニュース番組を担当している。逆境をチャンスに変えてキャリアアップを果たした彼女のジャーナリスト魂は、なかなかのものだ。



(次ページへ続く)

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