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ユーモアを解禁したタレント議員の回想録、NYで人気

[第207回]宮家あゆみ ライター、翻訳者



Photo: Nishida Hiroki

『Al Franken, Giant of the Senate』は、ミネソタ州選出の現職の連邦上院議員アル・フランケンの回想録。フランケンは、1975年に放送が開始された米NBCテレビの人気番組サタデーナイト・ライブの創設メンバー。放送作家、コメディアン、俳優として大人気を博した人物だ。


こう書くとフランケンは知名度だけを頼りに政治家を目指した人物のように思えるが、そうではない。高校時代から政治を題材にした切れ味の良い風刺ジョークを得意とし、進学したハーバード大学では政治学を専攻していた。コメディアンとして成功してからも民主党支持のラジオ番組を主宰し、共和党政権批判の著作も多数出版。イラクやアフガニスタンの米軍基地を慰問するなど、政治に対する情熱と実績もあった。


米国には著者以外にもレーガン元大統領、アーノルド・シュワルツェネッガーなどの俳優・タレント出身の政治家がいるが、それぞれに知名度だけでなく独自の強い政策を打ち出している。


フランケンは、2008年の上院選に立候補した当初、コメディアン時代からの発言や態度が政治家にふさわしくないとして共和党やメディアから相当な攻撃を受けた。アメリカの政治家は、一般にメディアや人々に接する時の態度が丁寧だ。それでも現在のトランプ大統領のようにメディアとの対立姿勢を強く打ち出す政治家もいるが、自分の立場の方が上だといわんばかりの態度を示す政治家は少ない。


この本の読みどころは、フランケンが過去約10年間、有権者の支持を失わないため、「並々ならぬ努力」で我慢してきたユーモアを解禁しているところだ。各章ごとに、彼ならではの知的で小気味良いジョークがちりばめられ、爽快に笑わせてくれる。政治家の回想録としてこれほど面白い本は他にはないだろう。


現大統領についての記述は少ないが、ジョージ・W・ブッシュ元大統領や共和党中枢の政治家との親交についてのエピソードも語られている。民主党と共和党は敵対するよりもジョークを分かち合う方がお互いに有益だとフランケンはユーモアを交えながら語る。「フランケンを次期大統領候補に!」といったジョークも浮上するなど、民主党支持者からは絶大な評価を得ている本だ。



(次ページへ続く)

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