RSS

世界の書店から

[第200回]失われし故郷への相聞歌@パリ

浅野素女 ライター


『刑法353条(Article 353 du code pénal)』は、不動産詐欺にはまって、プロモーターを船から突き落とし、殺人に至った男の話。予審判事の前で、男が事件を発端から淡々と語り出す、一人称の物語だ。 ブルターニュ半島突端の荒涼とした風景、海軍工廠の閉鎖でさびれてゆく町、小金を渡されて解雇された男たち、崩壊する家庭、父親の絶望を見つめる息子の視線。作者タンギー・ヴィエルの得意とする舞台設定だ。脂の乗り切った40代、その筆は冴えわたり、よどんだりつんのめったりする男の語り口、そこに時々はさまれる予審判事の反応や言葉が、ひとりの凡庸な男の人生、つまりは私たちの人生を、みごとに炙り出してゆく。


Asano Motome

1960年生まれ。パリ郊外在住のライター。フランスに暮らして30年余り。著書に『パリ二十区の素顔』ほか。最新刊に『生きることの先に何かがある』(さくら舎)。



(次ページへ続く)

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加

Back number | バックナンバー

[第224回]浅野素女 ライター 保守系文化人の「遺言」@パリ

[第224回]浅野素女 ライター
保守系文化人の「遺言」@パリ

[第223回]泉京鹿 翻訳家 習近平の若き日々@北京

[第223回]泉京鹿 翻訳家
習近平の若き日々@北京

[第222回]園部哲 翻訳者 老夫婦の冬と夜明け@ロンドン

[第222回]園部哲 翻訳者
老夫婦の冬と夜明け@ロンドン

[第221回]美濃口坦 翻訳家兼ライター 旧東独政治家の奮闘@ミュンヘン

[第221回]美濃口坦 翻訳家兼ライター
旧東独政治家の奮闘@ミュンヘン

[第220回]戸田郁子 作家・翻訳家・編集者 米中戦争の危機描く@ソウル

[第220回]戸田郁子 作家・翻訳家・編集者
米中戦争の危機描く@ソウル

[第219回]宮家あゆみ ライター・翻訳者 人間ダ・ヴィンチに迫る@ニューヨーク

[第219回]宮家あゆみ ライター・翻訳者
人間ダ・ヴィンチに迫る@ニューヨーク

Popular article | 人気記事

さらに記事を見る
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示