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[第200回]失われし故郷への相聞歌@パリ

浅野素女 ライター


『刑法353条(Article 353 du code pénal)』は、不動産詐欺にはまって、プロモーターを船から突き落とし、殺人に至った男の話。予審判事の前で、男が事件を発端から淡々と語り出す、一人称の物語だ。 ブルターニュ半島突端の荒涼とした風景、海軍工廠の閉鎖でさびれてゆく町、小金を渡されて解雇された男たち、崩壊する家庭、父親の絶望を見つめる息子の視線。作者タンギー・ヴィエルの得意とする舞台設定だ。脂の乗り切った40代、その筆は冴えわたり、よどんだりつんのめったりする男の語り口、そこに時々はさまれる予審判事の反応や言葉が、ひとりの凡庸な男の人生、つまりは私たちの人生を、みごとに炙り出してゆく。


Asano Motome

1960年生まれ。パリ郊外在住のライター。フランスに暮らして30年余り。著書に『パリ二十区の素顔』ほか。最新刊に『生きることの先に何かがある』(さくら舎)。



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