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世界の書店から

[第198回]「病は気から」???@ミュンヘン

美濃口坦 翻訳家兼ライター


『Wer wir waren(私たちは何者だったか)』の著者ローガ・ウィレムゼンは著述家で、彼の議会審議傍聴記を過去に当欄で紹介したことがある。昨年彼はガンで亡くなった。生前、彼は「私たちは何者だったか」という本を準備していた。その頃著者は「未来について」という講演をしたが、これは計画する自著に対しての人々の反応を知るためであった。その後病気であることが判明して計画を断念。本書は、この講演が編集されたもので、出版にあたり、彼自身の手で書かれることのなかった本の題名がタイトルとして採用された。


本書のなかで著者は自分の見解を次のように説明する。自分たちが生きている時代を描くにあたり、過去にさかのぼってどうしてこうなったかを説明することが多い。自分は反対の道をたどり、未来の世代が自分たちをどのように見るかについて書きたいという。だから「私たちは何者だったか」という題名になる。


企画が実現しなかったのは残念であるが、本書を読むとどんな本になったかが想像できる。著者によると、今の時代はテンポが早くなり、人々も仕事を次から次へとこなそうとするために落ち着いて何かをすることもなく、通り過ぎるだけになってしまったと嘆く。また私たちが地球温暖化や戦争など厄介な問題に目をつぶり、自分の今の生活を変えようとしないで、脳波に反応して動き出す機械のようなハイテクによる「バラ色の未来」を夢見ているという。


このような文明批判は目新しくないかもしれないが、未来の世代から見て「私たちは何者だったか」と問われながら本書を読むと共感を禁じ得ない。



(次ページへ続く)

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