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[第152回]戦時下の若者たちのドラマ

宮家 あゆみ ライター、翻訳者





photo: Sako Kazuyoshi

今回はフィクション部門から。第2次世界大戦時、ナチス・ドイツ占領下のフランスを舞台にした小説が2冊、ベスト10入りした。どちらも戦争に巻き込まれた若者たちを描いた人間ドラマだ。


世界各地のテロや紛争が、テレビやインターネットで日々、伝えられる現在、過去の戦争の悲惨さを伝える物語に人々は改めて何かを感じているのだろうか。どちらも読み応えのある作品なので、一方を読んだ読者が、もう一冊にも手を伸ばすといった相乗効果もあるだろう。



『The Nightingale(ナイチンゲール)』は、ナチ占領下のフランスで、対照的な人生を生きた姉妹の物語だ。表題の「ナイチンゲール」とは、白衣の天使のことではなく、対独抵抗運動(レジスタンス)で、連合軍パイロットの仏国外への逃走を手助けした人物の暗号名。実在のベルギー人女性がモデルとなっている。


第1次世界大戦への従軍経験から心に傷を負った姉妹の父親は、妻の死後、ふたりの娘の養育を拒絶した。姉のヴィアンは田舎の家にとどまり、慰めを求めて17歳で結婚。年の離れた妹のイザベルは、姉とちがって反抗的な性格で、寄宿学校を転々としていた。


第2次世界大戦が始まり、ナチス・ドイツがフランスへ侵攻した。ドイツの占領地域では、フランス人の自由は奪われ、食料も配給制となり、ヴィアンの生活は困窮していった。戦争捕虜となった夫の帰りを娘と共に待つなか、自宅にドイツ軍将校を住まわせることを強要される。娘の命を守るため、屈辱的な仕打ちに耐えるうちに、ヴィアンの心に勇気が芽生えていく。自分と子どもの命を危険にさらしながらも、迫害を受けるユダヤ人の子どもたちを救う活動を始める。


一方、妹のイザベルはパリでレジスタンスに参加。偽名を使い、住居を転々としながら、「ナイチンゲール」となって、連合軍パイロットの逃走を手助けする。


著者のクリスティン・ハナは、米西海岸を舞台にしたロマンス小説で広く知られる作家。歴史小説は初挑戦のジャンルだが、綿密なリサーチによって、戦時下を生き延びた勇敢な女性たちと彼女たちの心の葛藤を描き出すことに成功した。


物語は1995年、米西海岸の老女の語りから始まっている。彼女が誰であるのかの謎は最後に明かされる。



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