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[第26回] 「ならず者」と「名門」の生き様

宮家あゆみ Ayumi Miyake ニューヨーク在住ライター・翻訳者

オバマ大統領の支持率が5割を切ったいま、2010年の米国ベストセラーの幕開けとして政治家の本を2冊紹介したい。どちらもこの国の未来を考えるうえで興味深い内容だが、何よりもタイトルからして非常に対照的。

 

08年大統領選の共和党副大統領候補で様々な話題と騒動を呼んだサラ・ペイリンの自伝『Going Rogue(ならず者で行く)』は、ぶちまけトークが満載だ。一方で、昨年死去した民主党上院議員エドワード・ケネディの回想録『True Compass(真実の羅針盤)』からは、名門ケネディ家の誇りがうかがえる。

まずは『Going Rogue』。アラスカ州知事就任後わずか2年で副大統領候補に指名されて一躍有名になったペイリンは、本著でもマケイン陣営の選挙対策本部批判などを派手に展開し、お騒がせ人物として再浮上。昨年11月の発刊以来、1位を独走している。

前半ではアラスカの大自然の中で育った幼少時代、信仰、結婚、出産、家族などの半生が語られる。ブルーカラーの夫の妻であり、5人の子どもを持つワーキングマザー。彼女の庶民的な生き方は、保守系米国人女性の代表とも思える。政界進出は28歳。地元ワシラ市の市議から32歳で市長に、さらに42歳でアラスカ州知事にまで駆け上った。

 

レーガン政権を信奉する彼女の理想は小さな政府だ。減税と徹底した市場主義。軍備を強化した最も強い国。政治理念を語りつつ、随所でオバマ政権批判を展開する。一番の読みどころは後半、マケイン陣営の選挙対策本部責任者スティーヴ・シュミットを痛烈に批判している部分だ。

本部スタッフが用意したスピーチ原稿以外の発言を禁じられた。頼みもしないのに高価な衣服を彼女のみならず家族全員に用意された。娘の妊娠に関するコメントを勝手に発表され、本部の許可のないマスコミとの接触を禁じられた――。

やがて内政や外交に関する知識不足が世間に露呈し、ペイリン批判が始まってオバマ陣営の勝利が濃厚になると、シュミットは責任を押し付けるべく彼女に不利な噂をマスコミにリークしたという。その矛先は無責任な報道をしたマスコミにも向けられる。CBSテレビのニュースキャスター、ケイティ・コーリックのインタビューがいかに偏見に満ちたものであったかなど、自己弁護に終始する。

次の大統領選出馬も噂されるペイリン。家族の名誉を守るために本書の執筆を決めたというが、「ディベート対策のため、短期間に大量の資料を読まされた」
「中東問題に関しては一般の米国人程度の知識は持っていた」など率直に語れば語るほど、副大統領としての資質に欠けていたことがわかる。身内である共和党の恥をこれほどまでに暴露した点でも、その人間性に疑問を感じる人は少なくないだろう。

(次ページへ続く)

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