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母親と叔母の同性愛、弟と継母の道ならぬ関係など、複雑な人間関係も錯綜する。100人近くにのぼる登場人物の多くは、張愛玲自身が投影されている盛九莉の一族の人々である。そして、邵之雍のモデルとされる胡蘭成と張愛玲の現実の恋愛の顛末にも重ねて読まずにはいられない。2人の愛憎ばかりがクローズアップされがちだが、大家族の人々の退廃ぶりが丁寧に淡々と描かれているからこそ、愛する人とのささやかな幸せを望んでも得られない苦悩が、コントラストで浮かび上がっている。
かなり唐突な、便器の中に胎児を見て水で流してしまう、十数年後のニューヨークでの堕胎シーンの挿入も議論を呼んでいる。こうしたエピソードも張愛玲の後年の孤独を色づけし、小説と現実の距離をなくしてしまうのが、せつない。
『西决』は、毎月50万~70万部を売り上げるカリスマ作家・郭敬明が編集長の若者向け文芸誌『最小説』で連載されていた。山西省生まれで92年からフランスに留学、パリの名門大を卒業後、EHESS(社会科学高等研究院)のマスターコースに在籍中の著者・笛安は、共に実力派の著名作家である李鋭と蒋韵を両親に持つ文学界のサラブレッドだ。「80後(80年代生まれ)」と呼ばれる一人っ子世代による「家族」を軸にした小説は珍しい。 舞台は著者の故郷、竜城の別称を持つ山西省太原。鄭西决は幼い頃に両親を亡くし、3番目の叔父の家で育つ。伯父一家も独身の叔父もそばにいる。
中国では従兄を「兄さん」、従姉を「姉さん」と呼ぶが、実際に兄弟姉妹同然に近しい。西决と従姉妹たち、親の世代の因縁をめぐる一族それぞれの、恋愛、結婚、人生模様を描く。地元進学校の教師である西决の同僚でもある独身の叔父は、かつて女生徒との恋愛事件が原因で離婚、学校でも不遇に甘んじている。
その叔父の過去が思わぬ形で西决の一族に波乱を起こす。それでも、「家族」は「家族」。生活は続く。西决の視点による素朴でまっすぐな描写が、人物たちの個性以上に、それぞれの関 係性を切り取ったシーンの残像を読む者の心に残す。
2冊とも「大団円」のハッピーエンドとはいえない物語。そもそも九莉も西决も望むのは「小団円(ささやかな幸せ)」なのだ。時代、空間こそ異なるものの、いずれも20代で人気作家となった女性作家による、中国の「一族」「家」の重さ、そして求める幸せの形を考えさせる作品である。
2.北京の大学4年生・楊小羊の“就活”奮闘記。いかに自分をアピールするか、企業の対応をどう見るかなど、具体的なアドバイスのテキストとしても読める。この夏、大学を卒業する大学生610万人、いまだ求職中の既卒者250万人、計860万人の大卒者が職を争う空前の就職難が予想される。全国の大学生が置かれている状況がリアルに描かれていると、大学の先生に薦められて読む学生も多いとか。

3.06年にネット上で話題になり、盗掘アドベンチャー小説ブームを引き起こした『鬼吹灯』(全8巻)の著者による、ミステリーファン待望の新作。ミャンマー北部の山で、山賊の仲間に引きずり込まれたビルマ共産党ゲリラ隊員が、謎の荷物を探して足を踏み入れた先には……。『鬼吹灯』の姉妹編&中国版『レイダース 失われた聖櫃』が売り文句。
4.60万部を超えるベストセラー『杜拉拉昇職記-中国ホワイトカラー必読キャリアトレーニング小説』の第2部。映画化決定、人気女優の徐静蕾がメガホンをとってこの夏クランクインすると発表され、まだまだブームは終わらない。続編の刊行も待たれる。
5.「誰よりもあなたを愛する人は、一切を取り去って、声だけであなたを見わけられる」。
火事で家族も美貌も失った少女は、名前を捨て、整形し、過去を葬って女性デュオとしてデビューする。芸能界の光と影、サスペンス要素も盛り込んだ、愛と孤独の青春小説。1作目から2カ月遅れの5月に刊行されたこの「完結編」で、10年あまりの時を経て過去の悲劇の真相が明らかになる。著者は北京大学ラジオ・テレビ演出専攻の現役女子大生。
6.元々は1万4000字の短編小説だったが、北京テレビが放送して大ヒットした連続ドラマのために改編され、15万字の長編となった。国民党の余則成は、婚約者が共産党員だったことから共産党に転身、革命に身を投じる。やがて任務の必要から農村のゲリラ隊員のがさつな女性と偽装結婚するが、いつしか愛が芽生える。
抗日戦争後に対立した共産党と国民党の国共内戦で暗躍するスパイ物語。
建国60周年の今年、中国共産党のアイデンティティーを裏付けるこの時代を背景にしたドラマ、映画が続々登場し、その原作にも注目が集まる。
7.日本でも邦訳、映画化で話題になった全米で大ヒッした小説『トワイライト』の中国語訳。
9.タイトルは「一言は万言に勝る」の意。オビには「中国人の千年の孤独」の文字が躍る。「何でも話せる相手」を求めて、河南省の片田舎から出て行く人、帰ってくる人。それぞれの孤独をユーモアたっぷりに描く。自ら脚本も書き、数々の作品が映画化されている売れっ子作家・劉震雲の最新作。小説でも映画でも、中国語ならではの言葉の面白さで笑わせ、うならせるのが劉震雲作品の醍醐味である。
10.08年にシリーズ1作目~4作目が、今年に入って5作目が相次いで刊行された大人気シリーズの最新作。838年、吐蕃ランダルマ王が仏教信仰を禁じ「廃仏」を行った際、僧侶たちによってひそかに場所を移された経典や仏像。チベット仏教とチベット千年の隠された秘史を訪ねるミステリー長編で、シリーズ第7巻の発売も間近。まだまだ続くようだ。