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Sebastian Barry著『The Secret Scripture』。前述のごとく、『The White Tiger』とブッカー賞を争った作品である。著者にとってブッカー賞の最終
候補ノミネートは2回目。またしても受賞を逸したが、同作品で08年コスタ文学賞最優秀賞を受賞(発表は今年1月)。
アイルランド北西部のとある精神科病院。老婦人ロウザンは半世紀前からそこの住人である。彼女の主治医を務めてきたグリーン医師は、なぜロウザンがこの病院に入院することになったのか疑問を持ち、より親密な対話を試みる。と同時に2人はそれぞれ並行して私的な手記を書き始める。ロウザンは青のボールペンで昔々の記憶を掘り起こす。グリーン医師は事務的な調子で備忘録を綴る。それがほぼ交互に語られる。
墓守の娘ロウザンは美しかった。しかし、その美貌と家の宗旨がプロテスタントだったために彼女はカトリックから迫害を受けた。ロウザンの人生はアイルランド独立戦争を背景に、ねじ曲げられ放逐され、いつの間にか精神科病院の患者に仕立て上げられた。彼女の綴る告白の書は夢見るようなパッセージに満ちている。だがそれは辛い過去を美しく誤解しようとする詩的隠蔽なのである。無残な現実を詩に昇華してしまった、せざるを得なかった娘が押し殺してきた孤独と絶望に我々は心を揺さぶられる。
一方、事務的な用件で開始した高齢患者の履歴調査のはずだったが、調査を進めるにつれ、グリーン医師の手記は備忘録としての落ち着きを失い熱のこもった探索の書となってゆく。
2人の手記はこうして交錯し、詩と真実の距離が縮まり、驚くべき事実が季節はずれのバラのように開く。そこかしこにちりばめられた美しい表現にページを繰る手がとまり、心地よいリズムは音読をそそのかす。

1.は女性向け娯楽小説ヒットメーカーのアイルランド人による17作目。昨日まで恋人だった政治家パディにふられたスタイリストのローラ。傷心のローラからゴシップを聞き出そうとするジャーナリストのグレース。その姉マーニーはその昔パディと関係があった気配。そしてパディの婚約者アリシア。4人の女性とパディの物語。
2.の舞台はアトランタ郊外の高級住宅地。帰宅した主婦アビゲイルはドアの鍵が開いていることに気づく。留守番中の娘エマの安否を気遣って彼女の寝室へ駆けあがる。そこには血だらけの娘とナイフを手にした男がいた。
3.は軍人上がりの警官、ジャック・リーチャー・シリーズの第12作目。ジャックはふと立ち寄った「絶望」という名の町のレストランで住人からいわれなき攻
撃を受け、浮浪罪で逮捕される。奇妙なその町は怪しげな企業を隠していた。
4.の著者はコメディアンでもあれば児童書も書く英国の推理作家。ロンドン南地区のギャング・カルチャーを描く。
5.はミステリーの範疇を超えた魅力を持つ作品。女医ジョアンナの暗い過去は誰も知らない。ジョアンナに忠実な子守役の娘レジーはジョアンナの突然の失跡に当惑する。
6.の主人公、ウエディングプランナーのサラと2人の親友エルザ(ドレスデザイナー)とブロン(ヘアドレッサー)は他人の結婚式を演出するのが仕事。さて自分たちの結婚は?
7.を飛行機のなかで読んだニコール・キッドマンは作中のジャーナリスト、サラを演じたくてたまらなくなり、目下映画化のために奔走中だとか。ナイジェリアから英国へやって来た亡命少女リトル・ビーの行き先はひとつ。2年前姉と一緒にナイジェリアの海岸で出会った、いや、正確に言うならば彼女の命を救ってくれたジャーナリスト夫妻の家。もっと正確に言うならば、リトル・ビーを助け、姉の命を見捨てた夫婦の平和な家へ。昨年新刊の売り上げはわずか3千部。08年コスタ文学賞では9.と競ったが落選。ところが最近口コミでぐんぐん売り上げを伸ばし、本稿執筆時点では10万部を突破している。米国ではタイトルを『Li
ttle Bee』に変えて店頭に。
10.は彼女の何十作目かの作品。オードリー・ヘプバーンを想起させる女優キャロルがパリへ来る。ダイアナ妃の悲劇を想起させるトンネル事故で記憶を失うが、記憶の再構築の過程で人生を再発見する。