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著者の窓辺

[第20回]

魚を乱獲し続けると、海の生態系は壊滅する

『沈黙の海 最後の食用魚を求めて』 
Tyst håv Jakten pa den sista matfisken

イサベラ・ロヴィーン Isabella Lövin 欧州議会議員

 

いま、世界各地の海で水産資源が減りつつある。海洋汚染のせいでも、地球温暖化のせいでもない。乱獲が最大の原因だ。『沈黙の海』を書いた欧州議会議員のイサベラ・ロヴィーンさんは「このままでは海の生態系が壊滅してしまう」と警告する。6月に来日したロヴィーンさんに、世界の漁業の問題点や日本の果たすべき役割などを聞いた。

 

――タラのように日本人にもなじみのある魚が、これほど危機にひんしているのですね。驚きました。

「魚は誰のものでもなく、みんなの資源です。国際社会は歩調を合わせて問題に対処してほしい」

ロヴィーン カナダ・ニューファンドランド島の周辺では、1990年代前半にタラが捕れなくなりました。かつては世界で最もタラがたくさんいた海域にもかかわらず、です。こうした水産資源の枯渇はニューファンドランド島沖のタラに限った話ではありません。クロマグロやウナギ、サメなどさまざまな魚が、数十年にわたる乱獲の結果、あちこちの海で減っています。スウェーデンの食関連の雑誌にタラの記事を書くために取材を進めているうち、そうした事実を知って大きな衝撃を受けました。

なぜこんな状況になったのだろう?今後どうなってしまうのか?解決策はないのか?そんな疑問への答えを探したくて、本を書くことにしたのです。

 

――乱獲によって激減している魚といえば、大西洋・地中海クロマグロが頭に浮かびます。国際取引を全面的に禁止しようというモナコや欧州連合(EU)の提案が、今年3月のワシントン条約締約国会議で否決されましたね。

ロヴィーン とても残念です。地中海で捕れたクロマグロの約9割が日本へ輸出されていますが、危機にひんしている魚を捕り続けるのは間違いです。EUもマグロ漁船の近代化のために助成金を出してきました。責任は大きい。


進まない漁業の規制


――ここまで危機的な状況になってしまう前に、だれかが問題に気づかなかったのでしょうか?

ロヴィーン 「水産資源の枯渇は一時的なものにすぎない。来年はまた漁ができる」。だれもが、そう思い込んでしまいがちなのです。だから、漁獲量が減って商売にならない漁師たちに補助金を給付して漁業を続けさせたり、より性能のいい新型船づくりに助成金を出したりする。それが事態を悪化させてきたのです。

 

――環境先進国のスウェーデンでさえ対策が後手に回ったという点は、正直いって意外でした。

ロヴィーン 確かにスウェーデンは「環境にやさしい国」といわれています。ですが、環境保護のための法律が漁業に適用されてきませんでした。もし、絶滅の危機にひんしている鳥がいたら、その鳥は狩猟禁止になるでしょう。そういう当たり前のことが、海には当てはまらなかったのです。おそらく日本も同じような状況ではないでしょうか。


――EUの政策システムが壁になることもあるそうですね。

ロヴィーン その通りです。たとえばスウェーデンは2002年、自国の領海内でタラを禁漁にしようとしました。ところが、欧州委員会は「たとえ領海内であっても、加盟各国には漁業の政策に関して決定権がない。EUの共通政策に従うべきだ」として却下したのです。ある国が単独で対策に乗り出そうとしても、どうにもならないシステムなのです。


――そういう状況では、なかなか問題を解決できませんね。

ロヴィーン 欧州では魚の消費量が増えているのに、その一方で漁獲量は極端に速いペースで落ち込んでいます。95年に比べて25%も減ってしまいました。ですから、需要の6割を中国やベトナムなど海外からの輸入に頼らざるを得なくなっています。

また、EUの漁船がアフリカの海域に出かけて操業できるよう、アフリカの国々と漁業協定を結んでいます。EU各国の大型漁船がアフリカ沿岸で魚を乱獲する構図もあるのです。

(次ページへ続く)

イサベラ・ロヴィーン

1963年、スウェーデン生まれ。
ストックホルム大やボローニャ大で政治学を学んだ後、85年から記者、編集長、プロデューサーとして雑誌、ラジオなどで、環境問題や料理・食品などをテーマに取り扱う。
2007年の本書出版で、スウェーデン・ジャーナリスト大賞、環境ジャーナリスト賞を含む14賞を受けた。
09年から欧州議会議員。漁業や発展途上国問題などを取り扱う委員会に所属。

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