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著者の窓辺

[第4回]書くということはすべてがいかに測量できないかを理解するという作業だ

『世界の測量』 Die Vermessung der Welt

ダニエル・ケールマン Daniel Kehlmann  作家

数学者で天文学者のカール・フリードリヒ・ガウスと、地理学者で探検家のアレクサンダー・フォン・フンボルト。18~19世紀ドイツの科学者2人の対照的な人生を、「測量」をキーワードに浮かび上がらせた「哲学的冒険小説」は、ドイツでは100万部を超すベストセラーになった。

自然の秘密どう解くか 2人は対照的だった

――どうして2人を主人公にした小説を書こうと思い立ったのですか。
ケールマン
 2002年にメキシコに滞在したのがきっかけです。中南米探検で様々な発見をしたフンボルトに興味を持ちました。旅行記には、素朴におもしろいと思える記述が数多くありました。その後、フンボルトが1828年にガウスを自宅に招待していることを知りました。

ダニエル・ケールマン氏

2人とも自然界の秘密を解き明かし、理解しようと懸命でした。ひとり(フンボルト)は世界各地を自由に旅行していましたが、自らの世界観を押し通す「ドイツ的なもの」から離れられず、精神は自由ではありませんでした。もうひとり(ガウス)は祖国から離れなかったのですが、何者にも左右されない、当時では最も自由な精神の持ち主でした。科学のやり方も、ひとりは実際の経験に基づいた合理主義、もうひとりは抽象化を追求しました。
体と心の自由をめぐって対照的な2人の人生に気づいたとき、この小説の構想を思いついたのです。

――フンボルトとガウスを1章ずつ交互に描いていますね。
ケールマン
 面白い作業でした。2人がテレパシーで通じているかのように関連づけました。ドイツの章が終わると南米のフンボルトに移り、次の章はドイツのガウスに戻る。1人ずつを一気に描くよりは新鮮な気分で書き進められました。読者も同じように感じたかもしれません。
ガルシア・マルケスら南米文学の影響かもしれません。特に物語の流れを章ごとに変える手法は、マリオ・バルガスリョサがよく使っています。

――相当のリサーチが必要だったでしょう。
ケールマン
 もちろんです。小説ですが、事実だけはきちんと押さえておきたいと思いました。特に科学に関してはできるだけ正確にしようと、科学史の本をたくさん読みました。

ダニエル・ケールマン氏の略歴

1975年、ドイツ・ミュンヘン生まれ。81年からウィーン在住。ウィーン大で哲学や文芸学を学ぶ。22歳で作家デビュー。03年の「僕とカミンスキー 盲目の老画家との奇妙な旅」(邦訳は09年刊)で国際的な名声を得た。

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