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「触れずに操作」はもう実用の域 広島発の新商品、世界50カ国から問い合わせ

World Now 更新日: 公開日:
非接触型「タッチ」パネルの、すし屋での使用を想定したイメージ。画面に触らなくても操作することができる=アスカネット提供

広島市のアスカネットが開発した「ASKA(アスカ)3Dプレート」。厚さ約5ミリの透明プレートに光を通すことで、ちょうど反対側の空中に映像を映し出す仕組みだ。これに赤外線センサーを組み合わせれば、「タッチ」操作が可能になる。スウェーデンのセンサー会社などと協力してさらなる研究開発を進めている。

透明のガラスのように見えるASKA3Dプレート

「コロナ前は、お客様には『実用的なメリットはあるの?』と言われてきたが、ようやく良さを認識してもらえるようになった。感染症対策として、実際のモノに触れることに、みなさんが非常にナーバスになられている」と同社営業部チーフ・グローバル・ストラテジストの山本和宏さん(30)は話す。

空中に映し出された映像の前で、ASKA3Dプレートを持つ山本和宏さん

これまでは、強みである輝度や解像度の高さを生かし、大型展示会場でのデジタルサイネージのような「未来感」のある使われ方としての引き合いが多かった。今後は清潔さが求められる飲食店や医療現場などでの活用が増えると見込んでいる。大阪では、くら寿司の店舗入り口にある受付機での実証実験も始まった。山本さんは「この技術が普及することによって、タッチパネルの置き換えにつながると思うし、我々が想定していないような、全く新しい使われ方も出てくるのでは」と話す。

医療現場での使用を想定したイメージ=アスカネット提供

課題はスピード感のある生産だ。6月には神奈川県に生産技術センターを新設し、量産技術の確立をはかるという。海外でも国際見本市に出展するなどしており、これまで中国や独仏などの欧州、北米を中心に計56カ国からこの技術についての問い合わせが来ているという。

■ルーツは広島の写真館

3Dプレートを生み出したアスカネットは、ルーツをたどれば広島の写真館「飛鳥写真工芸社」(1982年設立)だ。今にいたる技術の大元は、遺影写真のデジタル加工から始まったという。93年には葬儀用写真を通信してプリントアウトする技術を他社に先駆けて開発。葬儀用写真の作成では国内のシェア3割を握り、業界トップだという。そのほか、1冊から作れる個人向け写真集の開発や、焼香台に3Dプレートを組み込んで遺影写真を空中に映し出すなど、新規事業を次々と開拓してきた。

ドイツ・ハノーバーで催された国際見本市で、ASKA3Dプレートを操作する来場者=2018年、アスカネット提供

ASKA3Dプレートの空中に像を結ぶ技術は、1997年に特許を取得。2011年にこの技術の研究者をスカウトして会社に招いたことが新規事業部発足のきっかけだという。山本さんは「我々の会社は『ビジュアルイノベーションカンパニー』。(写真館のイメージとは)畑違いのものではありますが、空中映像も映像表現の一つ」と話す。

「空中映像技術は、一般のユーザーさんに『こんな技術がもう身近にあるんだ』というのをまずは認知していただかないといけない。そのための活動にも力を入れていきたい」と山本さんは話す。