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Amazonのオシゴト

What Will Service Work Look Like Under Amazon? ニューヨークタイムズマガジンから

Tim Enthoven /The New York Times

米東部時間の7月10日午後9時。アマゾンは、年に一度の全社をあげた行事「プライムデー」を始めた。基本的には何でもセールになり、どこでもその会場になる。「『フリスレム』のサングラス、115.95ドルのところ16.79ドルに! 86%オフになるのはあと2時間8分51秒だけ、63%はすでに注文済みです!」……。


同社が「史上最大の一日」と呼ぶプライムデーは、じっくり買う物を選ぶ場でもなければ、消費者としての意識を育む場でもない。見えざる労働者と自動化された設備によって用意された荷物が2日以内に届くという、不思議なプロセスが始動するボタンをクリックすることがすべてだ。モノの移動とカネ儲けへとひた走るプライムデーは、「尊さ」とは対極にある。


毎年恒例のお祭り騒ぎは、アマゾンが今年134億ドルで買収したホールフーズ(アメリカの高級食品スーパー)が築き上げてきた企業イメージとは挑発的なほどにかけ離れている。アマゾンが黒字化する何年も前の1996年、売上高8億5000万ドルに迫るホールフーズの最高責任者だったジョン・マッキーは、ニューヨーク・タイムズにこう語っている。「我々には、利益を出す以外の目標があります。従業員のやりがいを引き出すには、お金以上の何かが必要になる」


2000年代に確立されたこの明確な企業メッセージは、会社を大きくすることを優先しない経営者、地域志向の全国チェーン店、理解ある雇用主、そして心ある(一般的に豊かな)消費者を生み出した。買い物をするときにただ物を買うだけでなく道徳心も満たされたい意識が高い彼らにとっては、食品はもちろん、労働力こそが適切に提供されるべきなのだ。


消費者運動が盛んだった90年代後半、買う商品とともに商品に関わる人々についても、消費者が快く感じられるようなやり方を打ち出したのが、ホールフーズだった。従業員が正当な賃金を得ているということ、店の管理体制や在庫についての発言権を持つことなどは消費者にも周知され、自発的に利益をもたらす存在として、彼らは従業員ではなく「チームメンバー」と見なされた。雇用主の利益のために働きながら、同時にその地域の暮らしぶりがもっと健康に、もっとよくなるよう目を配っていたのだ。


サービス業といえば、ハンバーガーショップで働く10代の子たちや小売店の季節労働者といった固定観念がまかり通っていた頃を思えば、これは業界の未来を勇気づけるビジョンだった。マッキーは、政府の助成や規制、ましてや組合などあてにすることなく、従業員の幸福は会社が約束するという気前のよさを見せようとしてきた。四半世紀近く成長を続けてきたホールフーズだったが、過度な膨張と疲弊した経済の餌食となり、不確かな時代へと足を踏み入れることとなった。


一方で、堂々たる買収宣言を掲げたアマゾンが重んじるのは「独占」だ。社会に益をもたらすような、抽象的な価値を提供することには目もくれず、ひたすら価格を下げることと商品の配達を追い求める。サービス業の未来に希望など持たない。負担の大きい倉庫の棚卸しは多くの場合下請け作業で、消費者の目からは遠ざけられる。15年の「タイムズ」紙の調査によると、倉庫に限らずオフィスにさえも、血の通わないような企業風土があるという。


ホールフーズがフェアトレードと地域に根差した供給に力を入れる一方で、アマゾンはめまいがするような供給網で成り立っている。それはうまく目に入らないようになっているのだが、隠されているというわけではなく、買い物をする客には分からないに過ぎない。


マッキーは、労働と政治を切り離しつつ、より倫理にかなった会社、道徳的な消費を追求してきた。それとは対照的に、アマゾンは自分たちがどんなことをしていて、どんな人が働いているのかといったストーリーをわざわざ伝えようとはしない。彼らは、確信しているのだ。消費者はそんなものがないほうが、より快適に買い物ができるということを。

(ジョン・ハーマン、抄訳 菴原みなと)©2017 The New York Times


John Herrman

ニューヨーク在住のジャーナリスト。「フォーブス」誌の選ぶ「30歳以下の30人」メディア部門に選出。

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