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[第12回]大災害最後の生存者の死で失うもの



出席者の一人が、あのデルモンテだった。株の売買をたしなみ、10人が10人素敵な男性だと語る。両親から伝え聞いた、生後3カ月当時の脱出劇をいきいきと語る彼こそが、サンフランシスコ大地震最後の生存者だったのだ。


地震に関する写真や書簡といった膨大なデジタルデータは、州の図書館や歴史協会の尽力によって保存されている。しかし、最後の生存者が亡くなる喪失感はどんな熱心な歴史家が持ちうる資料よりも大きい。昨年のデルモンテの死はその意味で、アーカイブ化された記憶に対して「生ける記憶」の価値を考えさせる契機と言える。実際に生き抜いた人々の存在が、過去を繰り返すまいという決意となって、いかに後世を奮い立たせてきたかを知る機会でもある。


生存者の声は、いくつもの優れた取り組みや良案を生み出してきた。被災地域のベイエリアでは、より頑丈な消火ポンプが導入されたり、次なる揺れに備えた建築規定が採用されたりした。震源となった断層付近をベイエリアの科学者たちが解析し始めたことで地震学調査が飛躍もした。北カリフォルニアには数十の活断層があることも今ではわかっている。米国地質調査所は最近、今後30年間にベイエリアで新たな巨大地震が起こる危険性は72%にのぼるとした。シアトル沖のカスカディア沈み込み帯により危険な断層線が潜み、いつ活発化してもおかしくないという。そうなれば、先の地震の30倍ものエネルギーが街を襲う。


デルモンテが熱心に出席した集会の支柱となっていたのは、生きた記憶が客観的事実にとって代わられてはならないということだ。私たちが耳を傾ける限り、そう語りかけてくれている。


(ジョン・ガートナー、抄訳 菴原みなと)

©2016 The New York Times



Jon Gertner

ニュージャージー州在住ライター。ニューヨーカー、ワシントン・ポストにも寄稿。ニューヨーク公共図書館特別会員。

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