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[第8回]ビヨンセを見習え

Photo: Asahi Shinbun

近未来を舞台にした小説『スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー』(2010)に出てくるiPhoneのようなスマート端末「アパラット」。通話、買い物、日常生活の発信はもちろん、仕事や経済力、ネット上の知名度などをもとに、その人を評価してランキングを公開してもくれる。評価を上げるには、プライベートな部分をさらすしかない。昇進も恋も、この結果次第というわけだ。


今や名のある企業は、このビジョンに近づこうと躍起だ。17億人のユーザーをもつフェイスブック(FB)は、リアルタイムで友人や家族に配信できる「ライブ動画」を、FB傘下のインスタグラムも、投稿した写真や動画が24時間後に消える「ストーリー」という機能を導入した。ある調査では大学入学事務担当者の40パーセントが、GPAや小論文の評価に加えてソーシャルメディア上の受験生のプロフィールを読み込んでいるという。


この世界ではシェアこそすべてとされるが、赤の他人の心の内が延々と流され、それらを過剰なまでにシェアする危うさもある。最近ベストセラー作家が最新作の扱いが不当だとFB上で大物司会者へ非難を浴びせ、人気ラッパーがほぼ裸の自撮り写真をインスタグラムに投稿した。ソーシャルメディアは私たちが何をシェアすべきで、何をすべきでないのかを区別する判断力を奪っている。


対照的なのが歌手のビヨンセだ。ライブでの映像でもない限り、彼女が日常を発信することはない。取材もめったに受けないから、私たちが知り得るのはソーシャルメディア上の彼女からそぎ落としたわずかな断片にすぎない。先週の服装や髪形はわかっても、地球上の一体どこにいてどんな家に住み、そもそもどの大陸に軸足を置いているのかまではわからない。多くのセレブと違い自撮り写真をほとんど投稿しない。それでも前から知っていたような親近感があり、他人の気がしない。カロリーは抑えめなのに不思議と満たされるのような存在だ。



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