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[第3回]耳をすませば




もう何十年も前ですが、イラン・イラク戦争で毒ガス攻撃を受けた私は、全身にやけどを負い、数カ月間は目も見えなくなりました(以来、目の手術を50回以上受けています)。肺もダメージを受け、半分以下しか機能していませんし、精神的にも不安定になりました。いつもイライラしていて、心と体の傷を癒やすため大量の薬が欠かせなかったものです。


精神科に通っても、いま一つ効果がありませんでした。そんな私を見かねた友人の医者が、音楽療法を勧めてきました。正直、戸惑いました。当時のイランは音楽への規制が厳しかったし、特に我々兵士はイスラム革命の防衛隊であり、音楽なんて不謹慎だとされていましたから。でも私は違法を承知で、結婚式にバンドを呼んだぐらい音楽が大好きでした。


父が経営する食料品店の近くに、マレク巨匠という偉大な音楽家がいました。彼は教室で教えるだけでなく、ピアノの原型という伝統楽器「サントゥール」もつくっていました。酪農場も経営していて、父の食料品店で売る牛乳はそこから仕入れていました。


ある日、仕入れに行くと巨匠はこんなことを言いました。「うちの牛乳はどうしてこの街で一番おいしいと思う? 牛が毎日音楽を聴いているからだよ。よく食べ、乳もよく出るようになる。長生きもするのさ!」。やはり医者が言うように、音楽には力があるのかもしれない。そう思い、教室に申し込みました。


教室の生徒は若い人ばかり。肺を痛めたせいでしょっちゅう咳が出るのが申し訳なく、結局、教室には1度しか行きませんでした。でも、サントゥールに恋に落ちるのには十分でした。

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