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[第2回]認知症の祖母とロボット猫



Photo: Andrew B. Myers

ある著名な霊媒師によれば、僕の猫には何やら悪いものがついている。思い当たる節はある。スピーカーつきの電話から人の声が聞こえると、怒りに燃えた目で僕の足にがぶりとかみつくのだ。


猫を愛するのは、愉快でミステリアス。僕だって、問題(もしくは呪い)を抱えたうちの猫にメロメロだ。この関係があったからこそ、祖母の所有するロボット猫に魅せられてしまったのだ。米国のおもちゃメーカー、ハズブロ社が製造しているコンパニオン・ペットのシリーズ「ジョイ・フォー・オール」の一つである。


今世紀の初めから、「コンパニオン・ペット」は、治療機器として世界中の高齢者施設で使われ始めている。最も知られているのは「パロ」だ。アザラシの赤ちゃんの形をしているが、そんなものを抱っこしたことのある人はまずいない。一方、「ジョイ・フォー・オール」のモデルは、長年飼いならされてきた家猫だけに、その非論理的なところを含めて、似せてつくるのがより難しい。



祖母との懸け橋は


91歳の祖母は、以前はとても活動的だったが、3年ほど前から認知症が進み始めた。今年初めにフロリダの施設を訪ねたとき、僕は自己紹介から始めないといけなかった。壁には5人の子どもの写真がかけられ、名前と住所が書かれている。鏡台の上にいたのが、オレンジ色のロボット猫で、死後硬直がきたような瞳で室内を見渡すその姿は「かわいい死体」という感じだったが、祖母はこれをキティ(子猫ちゃん)と呼んでいた。


近代科学は、まともなロボット猫をつくるには至っていない。複雑な機械が入っているせいで、手触りはお粗末だし、ねだるように「ニャー」と鳴く声色も単調だ。体には四つのセンサーが内蔵され、なで方によって異なる反応を見せる。毛皮に埋もれたフタを開ければ、不気味な電源スイッチがある。


しかし、この奇っ怪なロボ猫は、祖母と僕とをつなぐ懸け橋となったのだ。

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